ストレス買いを、お金のかからないご褒美に置き換えるには?「もし〜なら」の計画と15分の早歩きの研究

疲れた日の帰り道、気づいたら「頑張った自分へのご褒美」を買っている。ストレスを買い物で晴らすのは、心が自分を守ろうとする自然な動きです。やめようと決めるだけでは続きにくいので、研究では「代わりに何をするか」を前もって決めておく方法が試されてきました。この記事では、置き換えを続けるための工夫を、研究の結果と一緒に整理します。
3行でわかる
- 望む結果と邪魔になりそうなことを思い浮かべてから「もし〇〇になったら、△△する」と決める計画は、健康・学業などの目標を扱った21本の論文(15,907人)のメタ分析で、目標の達成を小〜中程度に後押ししていた(g=0.336)。買い物で試した研究は含まれていない。
- 欲求の置き換え先として、15分の早歩きが試されている。47人の実験では、座って休んだ日より甘い物への欲求が下がり、気分も上がった。
- 買い物がやめられない状態まで進んでいる場合は、治療研究のレビューで、グループでの心理療法が現時点で最も有望とされている(研究の質にはばらつきがある)。一人で置き換えにこだわらなくてよい。
01 悩みの正体ストレス買いは、なぜ「やめる」だけでは減らない?
ストレス買いは、気分を整える役目を買い物が担っている状態です。役目そのものは必要なので、やめるだけでは穴が空き、別の手段で埋める必要があります。
落ち込むと買い物をしたくなる仕組みはリテールセラピーの研究で、ご褒美が出費を正当化する仕組みはご褒美と自己許可の研究で扱いました。
この記事は、その先の「どう置き換えるか」に絞ります。
02 科学的にわかっていること置き換えを続けるのに、効く方法はある?
「もし〜なら、こうする」と前もって決める計画は、健康や学業などの目標で達成を後押しすることが、研究のまとめで示されている。買い物で確かめた研究ではないが、置き換えにも応用できる。置き換え先には、短い早歩きのように気分を上げる行動が候補になる。
Wang ら(2021)[1]
「目標を思い浮かべる→邪魔になりそうなことを考える→『もし邪魔が起きたら、こうする』と計画する」方法の効果を、21本の論文・24の効果量(15,907人)でまとめた。目標の達成への効果は小〜中程度(g=0.336)だった。研究者と話しながら計画を立てた場合(g=0.465)のほうが、文書を読んで立てた場合(g=0.277)より効果が大きかった。
対象: 健康・学業・人間関係・個人の目標を扱った研究(未刊行の修士・博士論文5本を含む) / 限界: 買い物そのものを扱った研究は含まれていない。出版の偏りを補正すると効果は g=0.242 に下がった。
Ledochowski ら(2015)[2]
甘い物を毎日食べる体重やや多めの47人が、別の日に「15分の早歩き」と「15分座って休む」の両方を行った。早歩きの後は、甘い物への欲求が座った日より下がり、気分と活力も上がった。ストレスのかかる課題の後も、欲求の高まりが小さかった。
対象: オーストリアの成人47人 / 限界: 食べ物への欲求の実験で、買い物への欲求で確かめたものではない。目の前で甘い物を手に取る場面では、差ははっきりしなかった。
Hague ら(2016)[3]
買い物がやめられない状態への治療研究29本を調べたシステマティックレビュー。心理療法の6研究では、治療の前後で症状が大きく下がっていた(d=1.51)。著者は、グループでの心理療法が現時点で最も有望だと結論づけた。
対象: 買い物がやめられない状態(強迫的購買)の治療を受けた人たち。診断の方法は研究によって異なる / 限界: 効果の大きさは対照群と比べない前後比較で計算されている。質が高いと評価された研究は29本中5本だけだった。
03 今日からできる小さな一歩ストレス買いを、どう置き換える?
まず、買いたくなる「きっかけ」を1つ決め、「もしそうなったら、代わりにこれをする」と1行で書く。置き換え先は、すぐできて気分が上がるお金のかからない行動にする。
「買いたくなるきっかけ」を1つだけ書く
「残業した日の帰り道」「夜11時にスマホを見ているとき」など、場面で書きます。直近のストレス買いを3つ思い出すと見つけやすくなります。
所要 5分
「もし〜なら、〜する」を1行で決める
例:「もし残業帰りに駅ビルに寄りたくなったら、ひと駅分を早歩きして帰る」。きっかけと代わりの行動を、1文にまとめるのがコツです。
所要 3分
置き換え先を3つ用意する
下の表から、場面ごとに使えるものを選びます。早歩きのように体を動かすもの、ゆっくりするもの、人とつながるものを1つずつ用意すると、場面に合わせて選べます。
所要 5分
| きっかけの例 | 「もし〜なら」の計画の例 | お金のかからない置き換え先 |
|---|---|---|
| 仕事で疲れた帰り道 | もし店に寄りたくなったら、ひと駅分歩いて帰る | 15分の早歩き |
| 夜、通販アプリを開いたとき | もしカートに入れたくなったら、アプリを閉じてお茶をいれる | 温かい飲み物、ストレッチ |
| 嫌なことがあった週末 | もし「ご褒美」と思ったら、まず友人に1通連絡する | 人と話す、好きな音楽を聴く |
| 給料日 | もし何か買いたくなったら、欲しい物リストに書いて翌週見直す | リストに書く(買うのは後日) |
04 続けるためのコツ置き換えが続かないときは、どうする?
続かないときは、計画を声に出すか人に話して立て直す。買う回数がまったく減らない、生活に支障が出ているときは、ひとりで頑張らず専門家の力を借りるのが近道。
- 計画は人と一緒に立てる。メタ分析では、研究者と話しながら立てた計画のほうが、文書を読んで立てた計画より効果が大きくなりました。家族や友人に1行の計画を話すのは、これを日常で試しやすくした形です(家族や友人との場合の効果は確かめられていません)。
- ご褒美を禁止しない。買うご褒美をゼロにする必要はありません。きっかけの場面だけ置き換え、本当に欲しい物は予算の中で選びます。
- 失敗した日も計画は捨てない。置き換えられなかった日は、きっかけの書き方が合っていなかった可能性があります。場面を書き直して、もう一度試します。
- やめられない状態かを確かめる。気分を変えるために買う、減らそうとしても減らせない、と感じるなら、衝動買いと「やめられない買い物」の違いで振り返り、医療機関などに相談することも考えてください。
05よくある質問
ストレス買いをやめるには、どうしたらいい?
やめると決めるだけでなく、代わりの行動を前もって決めておく方法があります。「もし〜なら、〜する」と計画する方法は、21本の論文のメタ分析で、健康や学業などの目標の達成を小〜中程度に後押ししていました(g=0.336)。買い物で確かめた研究ではありません。
お金のかからないご褒美には、何がある?
15分の早歩き、温かい飲み物、ストレッチ、人と話すことなどが候補です。47人の実験では、15分の早歩きで甘い物への欲求が下がり、気分も上がりました。ただし買い物への欲求で確かめた研究ではありません。
置き換えても買い物が減らないときは?
気分を変えるために買う、減らそうとしても減らせない状態が続くなら、やめられない買い物(強迫的購買)の状態かもしれません。治療研究のレビューでは、研究の質にばらつきはあるものの、グループでの心理療法が現時点で最も有望とされています。医療機関などの専門家に相談してください。
出典
- Wang, G., Wang, Y., & Gai, X. (2021). A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment. Frontiers in Psychology, 12, 565202. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.565202
- Ledochowski, L., Ruedl, G., Taylor, A. H., & Kopp, M. (2015). Acute Effects of Brisk Walking on Sugary Snack Cravings in Overweight People, Affect and Responses to a Manipulated Stress Situation and to a Sugary Snack Cue: A Crossover Study. PLoS ONE, 10(3), e0119278. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0119278
- Hague, B., Hall, J., & Kellett, S. (2016). Treatments for compulsive buying: A systematic review of the quality, effectiveness and progression of the outcome evidence. Journal of Behavioral Addictions, 5(3), 379–394. https://doi.org/10.1556/2006.5.2016.064


