「自分へのご褒美」がやめられないのはなぜか。「頑張ったから許される」心理の研究

大変な仕事を終えた日、「今日は頑張ったから」と少し高いスイーツや服を買う。節約を続けた週末に、ついまとめて使ってしまう。そんな「自分へのご褒美」は、気持ちを支えてくれる一方で、気づけば回数が増えていることもあります。研究では、頑張った後ほど、ぜいたくを自分に許しやすくなる心理が働くことがわかっています。
3行でわかる
- 5つの研究では、先に良いことをする選択をした人ほど、その後にぜいたくな商品を選びやすくなっていた。
- 約3,100人の研究では、特典を得るための努力が大きいほど、生活必需品よりぜいたく品の特典を選ぶようになっていた。努力が、ぜいたくへの罪悪感を減らしていた。
- 91の研究(7,397人)をまとめた分析では、良い行いの後に問題のある行動をとりやすくなる効果は、中程度より小さい大きさだった(効果量 d=0.31)。
01「頑張った」は、ぜいたくへの許可証になる
人は、良いことをしたり頑張ったりすると、「自分は良い人だ」という感覚が高まり、その後のぜいたくを「許されること」と感じやすくなります。これは「ライセンシング(許可)効果」と呼ばれます。
ぜいたくな買い物には、ふつう少しの罪悪感がともないます。「本当に必要かな」「お金を使いすぎていないかな」という気持ちです。
ところが、頑張った後や良いことをした後は、その罪悪感が小さくなります。「これだけ頑張ったのだから、これくらいはいいだろう」と感じるためです。
ご褒美そのものは、続けるための大切な工夫です。ただ、ご褒美の理由がいつでも見つかるようになると、ぜいたくの回数が少しずつ増えていきます。
02研究でわかっていること
良いことをした後や努力した後ほど、ぜいたくな選択を自分に許しやすくなっていました。ただし、効果の大きさは中程度より小さいものでした。
Khan & Dhar(2006)[1]
5つの研究で、先に良いことをすると決める選択をした人は、その後、ぜいたくな商品を選びやすくなっていた。良いことをしたことで自分への評価が一時的に高まり、ぜいたくへの罪悪感が減ることが理由と考えられた。良いことを「人に言われたからした」と感じた場合は、この効果は弱まった。
対象: 5つの研究の参加者 / 限界: 主に仮定の選択場面での研究。
Kivetz & Simonson(2002)[2]
約3,100人を対象にした一連の研究で、特典を得るための努力が大きいほど、生活必需品よりぜいたく品の特典を選ぶようになっていた。努力が、ぜいたく品を選ぶときの罪悪感を減らしていた。この傾向は、ぜいたくに罪悪感を持ちやすい人や、仕事として努力した場合に強かった。
対象: 約3,100人の消費者 / 限界: ポイント特典の選び方を調べた研究。
Blankenら(2015)[3]
良い行いをした後に、問題のある行動をとりやすくなる効果を調べた91の研究(7,397人)をまとめた。効果の大きさはd=0.31で、中程度より小さかった。出版された研究の方が、未出版の研究より効果が大きい傾向もあった。
対象: 91の研究、7,397人 / 限界: 出版の偏りがあり、実際の効果はさらに小さい可能性がある。
03今日からできる小さな一歩
ご褒美をやめる必要はありません。ご褒美のルールと予算を先に決めて、「頑張ったから」を理由にした買い物が増えすぎないようにします。
ご褒美のルールを先に決める
「月末に1回」「目標を達成したら」など、ご褒美のタイミングを先に決めます。その場の気分で決めないようにします。
所要 5分
ご褒美の予算を決めておく
月にご褒美に使っていい金額を決めます。予算の中なら、罪悪感を持たずに楽しみます。
所要 5分
お金を使わないご褒美も用意する
好きな場所への散歩、長風呂、好きな映画を見るなど、お金を使わないご褒美のリストを作っておきます。
所要 10分
04続けるためのコツ
ご褒美は、頑張りを続けるための大切な工夫です。ルールと予算を決めておけば、罪悪感なく楽しめます。
- 「今日は頑張ったから」と思ったら、それが本当に特別な日かを考えます。
- 節約を頑張った週ほど、反動で使いすぎていないか振り返ります。
- ご褒美を買ったら、レシートに「ご褒美」と書いておくと、月の回数を把握しやすくなります。
- 買い物がやめられず借金をしているときは、消費生活センター(188)に相談できます。
05よくある質問
自分へのご褒美について、よく検索される疑問に研究の範囲で答えます。
頑張った後にぜいたくしたくなるのはなぜ?
頑張ったことで「自分は良くやった」という感覚が高まり、ぜいたくへの罪悪感が小さくなるためと考えられています。約3,100人の研究でも、努力が大きいほどぜいたくな特典を選んでいました。
自分へのご褒美は悪いこと?
悪いことではありません。続けるための工夫として役立ちます。気をつけたいのは、ご褒美の理由がいつでも見つかり、回数が増えすぎることです。
良いことをした後に気がゆるむのはなぜ?
「ライセンシング効果」と呼ばれる心理です。91の研究をまとめた分析では、この効果は中程度より小さいものの、確認されています。
ご褒美で使いすぎないコツは?
ご褒美のタイミングと予算を先に決めること、お金を使わないご褒美を用意しておくことです。
出典
- Khan, U., & Dhar, R. (2006). Licensing Effect in Consumer Choice. Journal of Marketing Research, 43(2), 259-266. https://doi.org/10.1509/jmkr.43.2.259
- Kivetz, R., & Simonson, I. (2002). Earning the Right to Indulge: Effort as a Determinant of Customer Preferences toward Frequency Program Rewards. Journal of Marketing Research, 39(2), 155-170. https://doi.org/10.1509/jmkr.39.2.155.19084
- Blanken, I., van de Ven, N., & Zeelenberg, M. (2015). A meta-analytic review of moral licensing. Personality and Social Psychology Bulletin, 41(4), 540-558. https://doi.org/10.1177/0146167215572134