貯金が続かない

将来の自分のために貯金できないのはなぜ?時間割引の研究

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Simple piggy-bank based on a marmelade glas.
Photo: stevepb / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開されている研究論文や公的機関の資料をAI(Claude)が調べ、内容を確認して整理しました。SEADICEが独自に実験したものではありません(家計・投資の助言ではありません)。出典は末尾にあります。

「将来のために貯金しなきゃ」と思っても、10年後・20年後の自分のことはどこか他人事のように感じてしまう。それは計画性がないからではなく、人は将来もらえるものの価値を実際より低く見積もってしまう「時間割引」という心理の仕組みを持っているからだと、研究でわかっています。

3行でわかる

  1. 将来の価値を割り引く度合いは「今」と「少し先」の間で特に大きくなることが理論化されています。
  2. 年を取った自分の顔のCG画像を見ただけで、退職後のための貯金額が2倍以上に増えた実験があります。
  3. 自分の意志で引き出しを制限する貯金口座を使った人は、1年後の貯金残高が82%増えたフィールド実験があります。

01なぜ将来のために貯金できないのか?

将来もらえるお金の価値を、今もらえるお金より低く見積もってしまう「時間割引」という心理が、貯金より今の消費を選ばせやすくするためです。

経済学者のLaibsonは、この割引の度合いが一定ではなく、「今」と「少し先」の間で特に急激に大きくなることを理論化しました(双曲割引)。「1年後の10万円」より「1年1か月後の10万5000円」を選ぶ人でも、「今日の10万円」と「1か月後の10万5000円」なら今日の10万円を選んでしまう、という逆転が起きやすいのです。将来の自分が、今の自分とは別人のように感じられることも、この傾向を強めると考えられています。

02研究では何がわかっているのか?

将来の自分を身近に感じさせる工夫と、貯金を自動的に縛る仕組みの両方が、貯金を増やす効果を持つことが確認されています。

Laibson(1997)[1]

将来の価値の割引が時間とともに一定ではなく、直近ほど急激に割り引かれる「双曲割引」のモデルを提示しました。この理論は、なぜ人が「将来は貯金する」と計画してもその日が来ると先延ばしにしてしまうのかを説明する枠組みとして、その後の貯金研究の基礎になっています。

対象: 理論モデル(数理経済学の枠組み提示) / 限界: 理論モデルであり、個々人の割引率の大きさは実証研究ごとに異なる。

Hershfield, Goldstein, Sharpe et al.(2011)[2]

仮想現実の鏡で年を取った自分のCG画像を見た参加者は、退職後の口座に平均172ドルを割り当てたのに対し、今の自分の画像を見た参加者は平均80ドルでした。別のオンライン実験でも、将来の自分を意識した条件では給与の6.76%を退職金に回すと答え、今の自分を意識した条件(5.20%)を有意に上回りました。

対象: 大学生・一般成人50〜42人規模の複数の実験 / 限界: 実験室・オンラインでの意思決定を対象にしており、実際の長期的な貯金行動への効果は別途の検証が必要。

Ashraf, Karlan & Yin(2006)[3]

フィリピンの銀行で、自分で決めた目標額に達するまで引き出しを制限できる貯金口座(SEED)を提供したところ、口座を開いた人の貯金残高は6か月後に42%、1年後には82%増加しました。

対象: フィリピンの銀行の既存・元顧客1,777人(うち710人に商品を提案、202人が開設) / 限界: 特定の地域・所得層での実験であり、先進国の貯金習慣にそのまま当てはまるとは限らない。

03今日からできる小さな一歩

意志の力に頼らず、将来の自分を意識する工夫と、簡単には引き出せない仕組みを先に作ることが効果的です。

1

10年後・20年後の自分に名前をつけて考える

「未来の自分」を漠然とした他人ではなく、具体的な年齢・状況をイメージして「その人のための貯金」として考える。

所要 2分

2

給料日に決まった額を先に別口座へ自動振替する

「余ったら貯金」ではなく、振り込まれた直後に自動で貯金用口座に移す設定にする。

所要 10分(設定は最初の1回だけ)

3

引き出しにくい貯金先を1つ用意する

普段使わない銀行の口座や、解約・引き出しに手間がかかる仕組みを、少額からでも1つ持っておく。

所要 15分(口座開設)

04続けるためのコツ

貯金額を大きくしすぎず、自動化した仕組みを一度作ったらしばらく触らないことがコツです。

05よくある質問

「時間割引」とはどんな心理ですか?

将来もらえるものの価値を、今もらえるものより低く見積もってしまう心理です。Laibson(1997)は、この割引の度合いが「今」と「少し先」の間で特に大きくなる(双曲割引)ことを理論化し、貯金が先延ばしにされやすい理由を説明しました。

未来の自分の顔を見ると貯金は増えるのですか?

Hershfield et al.(2011)の実験では、年を取った自分のCG画像を見たグループは、今の自分の画像を見たグループの2倍以上(172ドル対80ドル)を退職後の口座に割り当てました。オンライン実験でも将来の自分を意識した条件で貯蓄率が有意に高くなりました。

自分の意志で引き出しを制限する貯金は効果がありますか?

効果が確認されています。フィリピンでの現地実験(Ashraf, Karlan & Yin, 2006)では、目標達成まで引き出しを制限する貯金口座を開いたグループの貯金残高が、6か月後に42%、1年後に82%増加しました。

将来のために貯金できないのは意志が弱いからですか?

そうとは限りません。未来の自分を身近に感じにくいこと自体が、多くの人に共通する心理的な傾向として研究で示されています。対策は「意志を強くする」ことより「引き出しにくい仕組みを先に作る」ことのほうが効果的だと考えられています。

出典

  1. Laibson, D. (1997). Golden Eggs and Hyperbolic Discounting. Quarterly Journal of Economics, 112(2), 443-478. https://ideas.repec.org/a/oup/qjecon/v112y1997i2p443-478..html
  2. Hershfield, H. E., Goldstein, D. G., Sharpe, W. F., Fox, J., Yeykelis, L., Carstensen, L. L., & Bailenson, J. N. (2011). Increasing Saving Behavior Through Age-Progressed Renderings of the Future Self. Journal of Marketing Research, 48, S23-S37. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3949005/
  3. Ashraf, N., Karlan, D., & Yin, W. (2006). Tying Odysseus to the Mast: Evidence from a Commitment Savings Product in the Philippines. Quarterly Journal of Economics, 121(2), 635-672.(評価概要: J-PAL) https://www.povertyactionlab.org/evaluation/commitment-savings-products-philippines