浪費・衝動買い

小銭やちょっとした支払いを、つい使ってしまうのはなぜか。「見えない支出」の研究

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Roman copper alloy radiate coin hoard, c 7,000 coins contained in a greyware storage jar.
The coins range in date from AD 230s-290s, a time
Photo: The British Museum, Ian Richardson, 2010-12-06 12:06:26 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(家計・投資の助言ではありません。出典は末尾)。

お釣りの小銭や、コンビニでのちょっとした支払いは、気づかないうちに使ってしまいがちです。「自分の意志が弱いから」と思う人もいますが、研究を見ると、金額の小さい支払いそのものに、気づきにくくなる仕組みが備わっているようです。

3行でわかる

  1. 支払う額が低いときは、現金でもスマホ決済でも「支払いの痛み」の差がほとんどなく(2.583対2.625)、むしろ商品の良い面に注意が向きやすかった(視線の動きで35.27%対31.87%)。
  2. 紙幣の使われ方を調べた研究では、多くの人が「小額紙幣の方が使いやすい」と感じていた(69%)が、実際の支払いは価格と同じ額面を選ぶ「価格マッチング」という別の仕組みにも強く左右されていた。
  3. 支出を減らす対策を調べたメタ分析では、記録する・事前にルールを決めるなどの工夫に中程度の効果(d=0.57)が見られ、効果的な対策は1つに限らなかった。

01少額の支払いが、気づきにくくなる理由

少額の支払いでは、払うときの心の痛みがもともと小さく、現金かキャッシュレスかという方法の違いでも差がつきにくいため、支出として記憶に残りにくくなります。

行動経済学では、お金を払うときに感じるわずかな不快感を「支払いの痛み」と呼びます。この痛みが大きいほど、支払いは記憶に残りやすく、次の支払いを控える力になります。

高額の支払いでは、現金の方がキャッシュレスより痛みを強く感じる、という違いがよく見られます。ところが価格が低いときは、現金でもキャッシュレスでも痛みはもともと小さく、方法による差がほとんどなくなることが研究でわかっています。

痛みが小さいぶん、注意は「払うこと」よりも「商品の良さ」に向きやすくなります。小銭や少額決済が記憶に残らず、気づかないうちに積み重なりやすいのは、この仕組みが関係していると考えられます。

02研究でわかっていること

少額の支払いでは支払い方法による心の痛みの差が消え、注意は商品の魅力に向きやすくなっていました。紙幣の使われ方や、支出対策の効果にも研究があります。

Maら(2024)[1]

スマホ決済がなぜ購入を促すのかを調べた実験。価格が高い場面では、現金(4.300)よりスマホ決済(3.463)の方が支払いの痛みが弱かった。一方、価格が低い場面では、現金(2.625)とスマホ決済(2.583)で痛みの差がほとんどなかった。別の実験では、低価格の商品を見るとき、スマホ決済の場合は商品の良い面を見る時間の割合が35.27%、現金では31.87%と、スマホ決済の方が長かった。

対象: オンライン実験160名、視線計測の実験59名(いずれも中国の消費者) / 限界: 実験室的な場面での測定で、実際の買い物とは条件が異なる。

Reutskajaら(2020)[2]

現金を渡して買い物をしてもらう実験。参加者の69%は「小額紙幣の方が使いやすい」と答えたが、実際に選んだ紙幣は、商品の価格と同じ額面に一致しやすかった(価格が安いときは98%が小額紙幣、価格が高いときはわずか17%)。小額紙幣が使われやすいのは、使いやすさの感覚だけでなく、価格と額面を合わせようとする働きも関係していた。

対象: ナイジェリアでの実験(399〜388名)を含む、計6つの実験(合計約4,000名) / 限界: 現金での買い物を想定した実験で、キャッシュレスには当てはまらない部分がある。

Davydenkoら(2021)[3]

支出を減らすための対策の効果を調べたメタ分析。15本の論文・29の研究、12種類の対策を対象に、平均的な効果は中程度(d=0.57)だった。89.7%の研究で小さくとも効果があり、58.6%では中程度以上の効果が見られた。あらかじめ計画する対策と、その場で実行する対策の効果に大きな差はなかった。

対象: 15本の学術論文・29の研究の統合分析 / 限界: 対策の種類によって、対象とした研究数に差があった。

03今日からできる小さな一歩

小銭や少額決済を「見える」状態にし、支払う前に一度だけ立ち止まる習慣をつけることが、気づかない支出を減らす助けになります。

1

小銭を透明な容器に入れる

財布の中でなく、見える場所に小銭を移します。たまっていく様子が見えると、使う前に意識しやすくなります。

所要 1分

2

少額決済の履歴を週1回見る

スマホ決済やICカードの履歴を、少額の支払いだけ数えてみます。合計額に驚くことがあります。

所要 3分

3

支払う前に「本当に欲しいか」と自分に聞く

少額でも、カゴに入れる前に一度だけ考える時間をつくります。商品の魅力だけで決めていないか確認します。

所要 10秒

04続けるためのコツ

少額の支払いを完全になくす必要はありません。「気づかないうちに積み重なる」と知っておくだけで、使い方を自分で選べる場面が増えます。

05よくある質問

少額の支払いについて、よく検索される疑問に研究の範囲で答えます。

少額の支払いはなぜ使いすぎにつながりやすいの?

支払う額が低いと、お金を払うときの心の痛みがもともと小さく、現金でもキャッシュレスでも差がつきにくいためです。研究では、低価格の条件で支払い方法による痛みの差がほとんどなく(2.583対2.625)、むしろ商品の良い面に注意が向きやすいことがわかりました。

現金とキャッシュレス、どちらが使いすぎを防げる?

支払う額が大きいときは、現金の方が痛みを感じやすく、使いすぎを抑えやすい傾向がありました。ただし少額の支払いでは、その差はほとんどなくなります。

小銭を使ってしまうのは意志が弱いから?

研究から見える限り、意志の強さの問題というより、少額の支払いでは心の痛みが生じにくいという、誰にも起こりやすい仕組みが関係しています。

出典

  1. Ma, Q., Tan, Y., He, Y., Cheng, L., & Wang, M. (2024). Why does mobile payment promote purchases? Revisiting the pain of paying, and understanding the implicit pleasure via selective attention. PsyCh Journal, 13(5), 760-779. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11444724/
  2. Reutskaja, E., Iyamabo, J., Raghubir, P., & Gallo, I. (2020). Price-Denomination Effect: Choosing to Pay With Denominations That Are the Same as the Product Prices. Frontiers in Psychology, 11, 552888. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7509091/
  3. Davydenko, M., Kolbuszewska, M., & Peetz, J. (2021). A meta-analysis of financial self-control strategies: Comparing empirical findings with online media and lay person perspectives on what helps individuals curb spending and start saving. PLoS ONE, 16(7), e0253938. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8266115/