セールだから買っていない?「お得」に動かされているかに気づく7つの質問

「半額だったから」と買った物が、家のどこかで眠っていませんか。セールに反応しやすいのは、性格の欠点ではなく、多くの人にある傾向です。研究者はこの傾向を「セール反応性(セール・プローンネス)」と呼び、質問票で測ってきました。この記事では、その質問項目と実験の結果を参考に、自分のくせに気づくための7つの質問を用意しました。
3行でわかる
- 研究では、価格への反応を「価格意識」「セール反応性」「価値意識」の3つに分けて測る。たとえば「セール中であることが、買う理由になりうる」に同意するほどセール反応性が高い。
- 値引きで買うと「得をした」気持ちが生まれ、食べ物を無駄にしやすくなる。中国の食堂の実験では、10元引きされた人の食べ残しの割合は30.6%で、値引きなしの24.9%より高かった。
- ただし想像の場面の実験では、「いくら得したか」でなく「いくら払ったか」に目を向けると、この差は消えた。振り返るときは、払った金額から考えるとよい。
01 悩みの正体「セールだから買う」は、どんな傾向?
「セールだから買う」は、研究で「セール反応性」と呼ばれる傾向で、質問票で測れる。安さそのものより、値引きされていることに反応する傾向を指す。
セール表示に心が動く仕組みは、価格アンカリングの研究や「お得感」と支出の研究で扱いました。この記事は、その先の「自分はどのくらい動かされているか」に気づくためのものです。
02 科学的にわかっていることセールで買った物は、無駄になりやすい?
食べ物では、値引きで買った物ほど無駄にしやすい傾向が実験で示されている。値引きで「得をした」と感じると、残したり捨てたりしやすくなる。服や家電で同じかはまだわからない。
Lichtenstein ら(1993)の質問票。Stuber ら(2020)の研究計画での紹介 [1]
価格への反応を3つに分けて測る。価格意識(5項目)、セール反応性(6項目)、価値意識(7項目)で、それぞれ7段階で答える。セール反応性の例は「セール中であることが、私がそれを買う理由になりうる」。
対象: オランダのスーパーで行われた研究の計画書で、使う質問票として紹介されたもの / 限界: ここに挙げた項目は例で、6項目すべてではない。
| 傾向 | 質問項目の例(日本語訳) | 高い人の特徴 |
|---|---|---|
| セール反応性(6項目) | セール中であることが、私がそれを買う理由になりうる | 値引きされていること自体が、買う決め手になりやすい |
| 価格意識(5項目) | 安い値段を探すために、余計な手間をかけるつもりはない(逆の意味の項目) | 同じ物をより安く買うために手間をかける |
| 価値意識(7項目) | 安い値段をとても気にするが、品質も同じくらい気にする | 払う額に対して、品質が見合うかで判断する |
オランダの、社会経済的に恵まれない地域のスーパーに通う成人361人(30〜80歳)の研究では、セール反応性の平均は7段階で4.7でした[2]。真ん中の4より少し高く、少なくともこの人たちの間では、セールに反応するのは珍しいことではありませんでした。
Wang ら(2026)[3]
中国の大学食堂で166人を2つに分け、片方だけ会計時に10元を値引きした。食べ残しの割合は、値引きされた人が30.6%、値引きなしの人が24.9%だった。オンライン実験(195人)でも、半額で買った場面では、まずいクッキーを捨てる意向が高かった(7段階で5.53対4.52)。
対象: 中国の成人・大学生など、4つの実験 / 限界: 調べたのは食べ物の無駄で、服や家電などにそのまま当てはまるかはわからない。多くは場面を想像して答える実験。
Wang ら(2026)の追加実験 [3]
大学生284人の実験では、「いくら節約できたか」に注意を向けた人では値引きで無駄が増えたが、「いくら使ったか」に注意を向けた人では、この差が消えた。別の324人の実験では、予算を超えた買い物だと感じた場面で、この差が見られなくなった。
対象: 中国の大学生284人と324人(どちらも場面を想像して答える実験) / 限界: 1つの研究チームによる結果で、ほかの国で同じ結果になるかはまだ確かめられていない。
Martino ら(2026)[4]
アメリカの大学生298人が模擬コンビニで買い物をした実験。たばこ広告から値引き表示を外すと、セール反応性が高い人でだけ、将来たばこを吸う可能性(喫煙感受性)が低くなる傾向が見られた。
対象: アメリカの大学生298人 / 限界: 統計的にははっきりしない境目の結果(P=.06)で、商品もたばこに限られる。
03 今日からできる小さな一歩セールに動かされているか、どう気づく?
セールに動かされているかは、最近セールで買った物を1つ思い出し、次の7つの質問に答えると気づきやすい。当てはまる数が多いほど、値引きが判断を動かしていたサイン。
研究の質問項目と実験の結果を参考に作った振り返りです。診断ではありません。思い浮かべる買い物を1つ決めてから答えてください。
| 質問 | 当てはまったら | 参考にした研究 |
|---|---|---|
| 1. 値引きがなくても、この値段で欲しいと思っていた? →「いいえ」 | セールが買う理由になっていた | セール反応性の項目 [1] |
| 2. 「いくら得したか」は言えるのに、「いくら払ったか」はすぐ言えない | 節約した気持ちが、払った額を隠している | Wang ら [3] |
| 3. 前にセールで買った物を、使い切っていない・ほとんど使っていない | 値引きで買った食べ物ほど無駄にしやすいという実験結果に近い | Wang ら [3] |
| 4. 買う前に、品質やほかの商品と比べなかった | 安さだけで決めていて、価値意識が働いていない | 価値意識の項目 [1] |
| 5. 通知や「本日限り」を見てから、買い物を始めた | 欲しい物からでなく、セールから買い物が始まっている | ネットの衝動買いのメタ分析(販売促進・期間限定などの品薄表示)[5] |
| 6. 今月の予算を超えているのに、「安かったから」で納得した | 予算を意識すると、値引きの影響は小さくなる | Wang ら [3] |
| 7. 好きなブランドより、セール中のほうを選んだ | 好みより値引きが優先されている | セール反応性の考え方 [1] |
最近セールで買った物を3つ書き出す
ネット通販の購入履歴を開き、「セール」「〇%オフ」で買った物を3つ選ぶ。1つずつ上の7つの質問に答える。
所要 10分
「払った額」を書き添える
割引額ではなく、実際に払った金額を横に書く。「いくら使ったか」に目を向けると、値引きの影響が小さくなったという実験結果を使う工夫です。
所要 3分
使っていない物に印をつける
3つのうち、ほとんど使っていない物に印をつける。印がついた物の共通点(通知から買った、深夜だった、など)を1行メモすると、自分のきっかけが見える。
所要 3分
04 続けるためのコツセール前に気づくには、どうする?
セール前に気づくには、カートに入れた時点で「定価でも欲しいか」と「払う額はいくらか」の2つだけを確かめる習慣をつけるとよい。7つ全部を毎回やらなくてよい。
- 質問は2つに絞る。買う前は、質問1(定価でも欲しいか)と質問2(いくら払うか)だけで十分。
- セールそのものを敵にしない。もともと欲しかった物が安く買えるのは得になる。問題は、セールがきっかけで買った物が使われないことだけ。
- 振り返りは月1回にする。カードの明細が届く日に、セールで買った物だけ見直すと決めておく。
- まとめ買いにも同じ質問を使う。大容量やまとめ売りの「お得」も、使い切れなければ得にならない。詳しくはまとめ買いの研究へ。
05よくある質問
セールで買ってしまうのは、お金にだらしないから?
いいえ。セールに反応する傾向は「セール反応性」と呼ばれ、珍しいものではありません。オランダの成人361人の研究では、平均は7段階で4.7と真ん中より少し高めでした。だらしなさではなく、値引き表示に心が動く普通の反応です。
セールで買った物を使わないのはなぜ?
食べ物を使った研究では、値引きで「お金が浮いた、余裕ができた」と感じることが、無駄を増やす仲介役になっていました。中国の食堂の実験では、10元引きされた人の食べ残しの割合が30.6%で、値引きなしの24.9%より高くなりました。服や日用品で同じことが起きるかは、まだ確かめられていません。
本当にお得な買い物かどうか、どう見分ける?
「値引きがなくても欲しかったか」と「実際にいくら払うか」の2つを確かめるのが簡単です。食べ物の引換券を想像する実験では、節約額でなく支払額に目を向けると、値引きによる無駄の増加が見られなくなりました。
出典
- Stuber, J. M., Mackenbach, J. D., de Boer, F. E., et al. (2020). Reducing cardiometabolic risk in adults with a low socioeconomic position: protocol of the Supreme Nudge parallel cluster-randomised controlled supermarket trial. Nutrition Journal, 19, 46. https://doi.org/10.1186/s12937-020-00562-8
- Stuber, J. M., Beulens, J. W. J., van Lierop, J. J. E., et al. (2024). Are Dutch adults equally susceptible to nudging and pricing strategies? Secondary analyses of the Supreme Nudge parallel cluster-randomised controlled supermarket trial. BMC Medicine, 22, 228. https://doi.org/10.1186/s12916-024-03429-5
- Wang, Y., Xu, W., & Sarigöllü, E. (2026). Do Promotions Make Consumers More Wasteful? The Effect of Price Promotion on Consumer Food Waste Behavior. Behavioral Sciences, 16(4), 495. https://doi.org/10.3390/bs16040495
- Martino, S. C., Setodji, C. M., Dunbar, M. S., et al. (2026). The effect of removing point-of-purchase price discounts on college students' future tobacco use susceptibility depends on price sensitivity. Translational Behavioral Medicine, 16, ibag055. https://doi.org/10.1093/tbm/ibag055
- Zhao, Y., Li, Y., Wang, N., Zhou, R., & Luo, X. (2022). A Meta-Analysis of Online Impulsive Buying and the Moderating Effect of Economic Development Level. Information Systems Frontiers, 24, 1667–1688. https://doi.org/10.1007/s10796-021-10170-4


