浪費・衝動買い

「セール」表示につい買ってしまうのはなぜ?価格アンカリングの研究

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Store Electronic Systems S-tag Electronic Shelf Label
Photo: Fdzevbez55 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開されている研究論文や公的機関の資料をAI(Claude)が調べ、内容を確認して整理しました。SEADICEが独自に実験したものではありません(家計・投資の助言ではありません)。出典は末尾にあります。

「定価12,000円が今だけ6,000円」という表示を見ると、本当に必要かより先に「お得だ」という感覚が動いてしまう。それは判断力が低いからではなく、最初に見た数字がその後の評価の基準(アンカー)になってしまう、人間の判断の仕組みによるものだと研究でわかっています。

3行でわかる

  1. 最初に見た数字は、それが無関係な数字であっても、その後の判断の基準点になることが実験で確認されています。
  2. 同じ割引額でも「%オフ」表示のほうが「円引き」表示より、お得感を強く感じさせることがメタ分析でわかっています。
  3. 価格の末尾を9にするだけでも需要が増えることが、複数のフィールド実験で確認されています。

01なぜセール表示につられてしまうのか?

最初に見た「定価」や「元の価格」が判断の基準点(アンカー)になり、その後の「お得かどうか」の評価がその基準点に引っ張られるためです。

人は価格の絶対的な高さより、何かと比べた「相対的なお得さ」で判断しがちです。行動経済学ではこれを「アンカリング(係留効果)」と呼びます。一度アンカーが心の中にできると、それが実際の価値と関係のない数字であっても、その後の判断に影響し続けます。セール表示の「元の価格」は、まさにこのアンカーとして働きます。

02研究では何がわかっているのか?

無関係な数字でも判断の基準点になること、割引の見せ方(%か金額か)で印象が変わること、価格の末尾ひとつでも需要が動くことが確認されています。

Tversky & Kahneman(1974)[1]

参加者の目の前で細工されたルーレットを回し、10か65のどちらかで止まるようにしたうえで「国連加盟国のうちアフリカの国の割合は?」と尋ねたところ、ルーレットが10で止まったグループの回答の中央値は25%、65で止まったグループは45%と、ルーレットの数字(本来まったく無関係)に回答が引っ張られました。

対象: 実験参加者(心理学の基礎実験) / 限界: 抽象的な数量の見積もりに関する実験であり、価格判断への効果の大きさは商品やタイミングによって異なりうる。

Krishna, Briesch, Lehmann & Yuan(2002)[2]

価格の見せ方に関する20本の研究をまとめたメタ分析では、「割合オフ(%オフ)」表示と「金額オフ(円引きなど)」表示のどちらも、お得感(知覚される節約額)を高める方向に働くが、割合オフのほうがその影響が大きいことが示されました。

対象: マーケティング分野の既存研究20本、345件の観測データ / 限界: 分析対象は主に欧米の小売価格に関する研究であり、業種・文化差の検証は限定的。

Anderson & Simester(2003)[3]

通販カタログを使った3つのフィールド実験で、価格の末尾を9にしたところ、3つの実験すべてで需要が増加しました。この効果は新商品でより強く、「セール」という表示と組み合わせるとやや弱まる傾向も見られました。

対象: 女性向けアパレルの通販カタログ購入者(実際の販売データを用いたフィールド実験) / 限界: アパレル通販という特定業態の結果であり、すべての商品カテゴリに当てはまるとは限らない。

03今日からできる小さな一歩

「元の価格」ではなく「今の自分にいくら払う価値があるか」を先に自分で決めてから、セール表示を見る順番に変えることが効果的です。

1

セール価格を見る前に、自分の予算を決める

その商品にいくらまでなら払いたいか、割引率を見る前に頭の中か紙に書いておく。

所要 30秒

2

割引率ではなく「実際に払う金額」で判断する

「70%オフ」ではなく「結局いくら払うのか」の実額だけを見て、必要かどうかを考え直す。

所要 10秒

3

「元の価格」を検索で確認する

同じ商品の他サイトでの価格や過去の販売価格を軽く調べ、「元の価格」が本当の基準かを確かめる。

所要 2分

04続けるためのコツ

セールを完全に避けるのではなく、「表示に判断を預けていないか」を毎回セルフチェックする習慣にすると負担なく続けられます。

05よくある質問

アンカリングとはどんな心理ですか?

最初に見た数字が基準(アンカー)になり、その後の判断がそこから離れにくくなる心理です。Tversky & Kahneman(1974)の実験では、無関係なルーレットの数字を見ただけで、その後の見積もりの回答が変わりました。

割引は「20%オフ」と「2,000円引き」どちらが魅力的に見えますか?

Krishna et al.(2002)のメタ分析では、割合表示(%オフ)のほうが金額表示(円引き)よりもお得感の知覚に強く影響することが、20本の研究の分析から示されています。

「$9で終わる価格」は本当に売れやすいのですか?

Anderson & Simester(2003)の3つのフィールド実験では、末尾を9にした価格は3つの実験すべてで需要を増やしました。ただし「セール」表示と組み合わせると効果が弱まる傾向も確認されています。

セール表示を見たら買ってはいけないのですか?

そうではありません。本当に必要なものが安くなっているなら、セールを活用すること自体は合理的です。研究が示すのは「表示のされ方だけで欲しさが変わってしまう」仕組みなので、まず気づくことが対策の第一歩になります。

出典

  1. Tversky, A., & Kahneman, D. (1974). Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases. Science, 185(4157), 1124-1131.(解説: Simply Psychology) https://www.simplypsychology.org/what-is-the-anchoring-bias.html
  2. Krishna, A., Briesch, R., Lehmann, D. R., & Yuan, H. (2002). A Meta-Analysis of the Impact of Price Presentation on Perceived Savings. Journal of Retailing, 78(2), 101-118. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0022435902000726
  3. Anderson, E. T., & Simester, D. I. (2003). Effects of $9 Price Endings on Retail Sales: Evidence from Field Experiments. Quantitative Marketing and Economics, 1(1), 93-110. https://econpapers.repec.org/RePEc:kap:qmktec:v:1:y:2003:i:1:p:93-110