この出費は幸せにつながりやすい?買う前に確かめる6項目のチェック表。「誰と」「待つ楽しみ」「自分に合うか」

せっかくお金を使うなら、満足につながる使い方をしたい。でも、買う前には「これは幸せにつながる出費か」がわかりにくいものです。研究では、同じ金額でも、誰と使うか、待つ楽しみがあるか、自分に合っているかで、満足の大きさが変わることが示されています。買う前に確かめられる6項目のチェック表にまとめました。
3行でわかる
- 体験か物かより「誰かと分かち合うか」が大事だった。4つの研究では、1人の体験は物と同じくらいの価値にとどまった。
- 払ってから使うまでの「待つ楽しみ」にも価値がある。7万6千件を超える銀行取引の研究では、自分の性格に合った使い方をする人ほど生活の満足度が高かった。
- 6項目のチェック表で、満足につながりやすい条件がいくつそろうかを買う前に数える。家計に余裕がない時期は、長く役立つ物を選ぶことも、研究に沿った選び方になる。
01 悩みの正体お金を使っても満足が続かないのは、なぜ?
お金を使っても満足が続かないのは、買う前に「値段」と「欲しさ」だけで決め、誰と使うか、待つ楽しみがあるか、自分に合うかといった、満足を左右する条件を確かめていないからだ。
お金と幸福の研究の全体像はお金の使い方で幸福度は変わるのか?で、使った後の振り返りは「何に使ったか」を2つの質問で採点する振り返り表で扱いました。この記事は、買う前に使うチェック表です。
02 科学的にわかっていること満足につながりやすい出費には、どんな条件がある?
研究で満足につながりやすかったのは、誰かと分かち合う出費、待つ楽しみがある出費、自分の性格に合う出費、他人と比べても満足が揺らぎにくい出費だった。ただし家計に余裕がない人では、体験の良さは見られなかった。
Caprariello・Reis(2013)[1]
4つの研究で、「人と一緒か1人か」と「体験か物か」を同時に比べた。人と分かち合う出費は1人の出費より価値が高く、体験だからといって物より幸せとは限らなかった。1人の体験は、物と同じくらいの価値だった。
対象: 4つの研究の参加者 / 限界: 主に質問紙や想像した買い物の評価で、実際の出費を割り当てた実験ではない。
Kumar ら(2014)[2]
4つの研究で、体験を待つ時間は、物が届くのを待つ時間より楽しくわくわくすることを示した。質問紙、大規模な日常の気分の記録、行列に並ぶ人の新聞記事の分析で、同じ傾向が見られた。
対象: 質問紙・日常の気分の記録・新聞記事 / 限界: 待つ楽しみを比べた研究で、使った後の満足まで含めた総合的な比較ではない。
Matz ら(2016)[3]
7万6千件を超える銀行取引の記録で、人は自分の性格に合った物に多くお金を使い、性格に合った使い方をする人ほど生活の満足度が高かった。この結びつきは、収入の多さや出費の総額との結びつきより強かった。追加の実験では、性格に合った出費で前向きな気分が高まった。
対象: 銀行の利用者の取引記録 / 限界: 取引記録の分析は相関で、因果を示したのは追加の実験の部分だけ。
Nawijn ら(2010)[5]
オランダの1,530人の調査で、旅行に行く974人は、行く前の幸福感が行かない人より少し高かった。著者らは、楽しみに待つ気持ちが関わった可能性を挙げている。帰った後は、行かない人と差がなかった。帰った後も幸福感が高かったのは「とてもゆったりできた」旅行の人で、8週間後には元の水準に戻った。旅行の長さは、帰った後の幸福感と関係がなかった。
対象: オランダの調査パネルの成人(平均50歳) / 限界: 観察した調査で、差は小さい。待つ楽しみが原因だとは確かめていない。
Carter・Gilovich(2010)、Lee ら(2018)[4][6]
8つの研究では、物の満足は、他の選択肢や別の値段、他人の買い物と比べることで、体験より下がりやすかった [4]。一方、別の研究では、体験の方が幸せという差は経済的に余裕のある人に見られ、余裕の少ない人では物の方が幸せか、同じくらいだった [6]。
対象: 複数の研究の参加者 / 限界: 日本の人に同じ結果が出るかは、これらの研究では確かめられていない。
03 今日からできる小さな一歩買う前に、幸せにつながる出費かをどう確かめる?
買う前に下の6項目に「はい・いいえ」で答え、①〜⑤の「はい」を数える。4〜5個なら満足につながりやすい条件が多く、0〜1個なら条件を足すか、1日置いてから決める。
| 項目 | はい・いいえ | 研究 |
|---|---|---|
| ① 誰かと一緒に使う・体験する、または誰かと分かち合える | 分かち合う出費の方が価値が高かった [1] | |
| ② 払ってから使うまで、楽しみに待つ時間がある | 体験を待つ時間は楽しい [2][5] | |
| ③ 人が持っているからではなく、自分の性格や好みに合っている | 性格に合う出費ほど満足度が高かった [3] | |
| ④ 後で安い値段や他人の物を見ても、満足は変わらなさそう | 物の満足は比較で下がりやすい [4] | |
| ⑤ 旅行なら、ゆったり過ごせる予定にしている | 「とてもゆったりできた」旅行だけ、帰った後も幸福感が高かった [5] | |
| ⑥ 家計に余裕がない時期なら、長く役立つ物を選んでいる | 余裕が少ない人では物の方が幸せな場合も [6] |
⑥は点数に入れず、家計に余裕がない時期の「選び方の確認」に使います。点数の目安は次のとおりです。
| ①〜⑤の「はい」 | 読み方 | 次にすること |
|---|---|---|
| 4〜5個 | 満足につながりやすい条件が多い | 予算の範囲なら、安心して楽しむ |
| 2〜3個 | 条件が半分ほど | 誰かを誘う、使う日を先に決めるなど、1つ足せないか考える |
| 0〜1個 | 条件が少ない | 1日置いてから、もう一度表に答える |
迷っている出費を1つ書く
「週末の外食1万円」「新しいイヤホン2万円」のように、物と金額を書きます。
所要 1分
6項目に答え、①〜⑤の「はい」を数える
正直に答えます。「はい」が少なくても、責める必要はありません。条件を知るための表です。
所要 3分
条件を1つ足せないか考える
1人で行く予定を友人と行く予定にする、すぐ使う物を「来月の旅行用」にするなど、同じ金額のまま条件を変えられることがあります [1][2]。
所要 3分
04 続けるためのコツチェック表を、習慣として続けるには?
続けるコツは、大きめの出費だけに使い、買った後に満足を振り返って表の答えと比べることだ。自分に合う条件が分かってくると、表に答える時間も短くなる。
- 使う場面を決める。毎日の買い物すべてではなく、「5千円以上」など自分で決めた金額以上の出費だけに使います。
- 使った後に振り返る。1か月後に満足度を思い出し、表の答えと比べます。振り返り方は振り返り表の記事にまとめました。
- 同じご褒美を繰り返さない。同じ楽しみの繰り返しは満足が上がりにくくなります。詳しくはご褒美に変化をつける研究で扱いました。
- 時間を買う出費も候補に入れる。お金で時間を作る使い方は「時間かお金か」の研究で扱っています。
- 点数は予言ではない。日本の人で同じ結果が出るかは確かめられておらず、効果は平均の傾向です [1][3][6]。最後は、自分が振り返って満足したかを大事にします。
05よくある質問
物より体験にお金を使う方が、幸せになれる?
いつもそうとは限りません。研究では、体験の良さは「誰かと分かち合うか」で大きく変わり、1人の体験は物と変わりませんでした。また、家計に余裕がない人では体験の方が幸せという差は見られず、物の方が幸せになる場合もありました。
チェック表の点数が低い買い物は、やめた方がいい?
やめる必要はありません。この表は満足につながりやすい条件がいくつそろっているかを見る振り返りで、将来の満足を予言するものではありません。点数が低いときは、誰かを誘う、使う日を先に決めるなど、条件を1つ足せないかを考えてみてください。
旅行は、帰ってきた後も幸せが続く?
オランダの1,530人の研究では、旅行に行った人は行く前の幸福感が高かった一方、帰ってきた後は旅行に行かなかった人と差がありませんでした。帰った後も幸福感が高かったのは「とてもゆったりできた」旅行の人で、それも8週間後には元に戻りました。
人がうらやむ物を買うと、満足が長続きしない?
物は、他の選択肢や値段、他人の持ち物と比べられやすいことがわかっています。8つの研究では、物の満足は、体験よりも比較によって下がりやすい結果でした。後で比べても満足できそうかを、買う前に考えておくと役立ちます。
出典
- Caprariello, P. A., & Reis, H. T. (2013). To do, to have, or to share? Valuing experiences over material possessions depends on the involvement of others. Journal of Personality and Social Psychology, 104(2), 199–215. https://doi.org/10.1037/a0030953
- Kumar, A., Killingsworth, M. A., & Gilovich, T. (2014). Waiting for Merlot: Anticipatory consumption of experiential and material purchases. Psychological Science, 25(10), 1924–1931. https://doi.org/10.1177/0956797614546556
- Matz, S. C., Gladstone, J. J., & Stillwell, D. (2016). Money buys happiness when spending fits our personality. Psychological Science, 27(5), 715–725. https://doi.org/10.1177/0956797616635200
- Carter, T. J., & Gilovich, T. (2010). The relative relativity of material and experiential purchases. Journal of Personality and Social Psychology, 98(1), 146–159. https://doi.org/10.1037/a0017145
- Nawijn, J., Marchand, M. A., Veenhoven, R., & Vingerhoets, A. J. (2010). Vacationers happier, but most not happier after a holiday. Applied Research in Quality of Life, 5(1), 35–47. https://doi.org/10.1007/s11482-009-9091-9
- Lee, J. C., Hall, D. L., & Wood, W. (2018). Experiential or material purchases? Social class determines purchase happiness. Psychological Science, 29(7), 1031–1039. https://doi.org/10.1177/0956797617736386


