ポイント還元につい惹かれてしまうのはなぜか。「ゴールが近いほど急ぐ」心理の研究

あと少しでポイントが貯まる、スタンプがあと2つで1杯無料。そう思うと、つい必要のない買い物までしてしまう。そんな経験はないでしょうか。研究では、ポイントやスタンプのしくみが「ゴールが近いほど急ぐ」という人の性質を刺激し、買い物のペースを上げることがわかっています。
3行でわかる
- コーヒー店の「10杯で1杯無料」の研究では、無料に近づくほど来店の間隔が短くなり、最初と最後のスタンプの間で約20%早まった。
- 最初からおまけのスタンプが2つ押された12マスのカードを配られた人は、通常の10マスのカードより早く10杯を買い終えた(12.7日対15.6日)。
- 航空会社のポイントを分析した研究では、ポイントを多く貯めている人ほど、ポイントをお金より価値の高いものとして扱っていた。
01ゴールが近づくと、人は急ぎたくなる
ポイントやスタンプのしくみは、「ゴールに近づくほど頑張りたくなる」という人の性質を利用しています。そのため、必要以上に買い物をしてしまうことがあります。
動物はエサに近づくほど速く走る、という古い心理学の発見があります。これは「目標勾配」と呼ばれ、人にも当てはまることが研究で確かめられています。
ポイントカードやスタンプカードは、まさにこの性質を刺激します。「あと少しで特典」と思うと、その特典を手に入れるために、ふだんより多く、早く買いたくなります。
さらに、人はポイントをお金とは別の「財布」に入れて考えがちです。ポイントで払うと、現金で払うときほど痛みを感じにくくなることもあります。
02研究でわかっていること
特典が近づくほど買い物のペースが上がり、「進んでいる気がする」だけでも同じ効果がありました。ポイントの価値の感じ方も、人によって大きく違っていました。
Kivetzら(2006)[1]
実際のコーヒー店の「10杯で1杯無料」の会員を調べると、無料に近づくほどコーヒーを買う頻度が上がっていた。また、12マスのうち最初から2つおまけのスタンプが押されたカードの人は、通常の10マスのカードの人より早く、必要な10杯を買い終えていた。
対象: カフェの会員などを対象にした複数のフィールド実験と調査 / 限界: アメリカのカフェなど特定の場面での研究。
シカゴ大学ブース・ビジネススクールの解説[2]
上の研究について、最初のスタンプから最後のスタンプまでに来店の間隔が約20%短くなったこと、10マスのカードは完成まで15.6日、おまけ付き12マスのカードは12.7日だったことを紹介している。
対象: 上の研究の大学による解説 / 限界: 研究結果の紹介。
Limら(2024)[3]
アメリカの大手航空会社のポイントのデータを分析した。人はポイントとお金を別の「心の財布」で扱っており、その航空会社で多くのポイントを貯めている人ほど、ポイントをお金より価値の高いものとして見ていた。一方、ポイントが少ない人やクレジットカードで貯めた人は、お金の方を好んでいた。
対象: アメリカの大手航空会社のポイント利用データ / 限界: 1つの会社のデータで、ほかのポイントに当てはまるとは限らない。
03今日からできる小さな一歩
ポイントは「おまけ」として扱い、ポイントのために買い物を増やさないようにします。買う前に、ポイントがなくても買うかを考えます。
「ポイントがなくても買うか」と自問する
レジに向かう前に、ポイントやスタンプが付かなくても今これを買うかを考えます。答えが「買わない」なら、その買い物はポイントのためかもしれません。
所要 10秒
ポイントカードの数を減らす
めったに行かない店のポイントカードは処分し、よく使う1〜2枚に絞ります。カードが多いほど、ゴールに近いものに引っ張られやすくなります。
所要 10分
ポイントの有効期限に振り回されない
「期限が切れるから」と使い道を探して買い物をするのは避けます。必要なものがないときは、失効しても大きな損ではないと考えます。
所要 数秒
04続けるためのコツ
ポイントを上手に使うことは悪いことではありません。大切なのは、ポイントのために買い物の量やペースを変えないことです。
- ポイント還元率より、そもそもの値段で比べる習慣をつけます。
- 「あと○ポイントで特典」の表示を見たら、ゴールが近いほど急ぎたくなる心理が働いていると気づくだけでも一拍置けます。
- ポイントで払うときも、現金と同じ価値のお金を使っていると考えます。
- ポイントやカードの支払いが増えて家計が苦しいときは、消費生活センター(188)に相談できます。
05よくある質問
ポイントと買い物について、よく検索される疑問に研究の範囲で答えます。
ポイントが貯まりかけると買い物が増えるのはなぜ?
ゴールが近いほど頑張りたくなる「目標勾配」という性質が働くためと考えられています。コーヒー店の研究では、無料に近づくほど来店の間隔が短くなっていました。
最初からポイントが付いていると、なぜ使いたくなるの?
「もう進んでいる」と感じるためです。おまけのスタンプが2つ押されたカードの人は、通常のカードより早く必要な数を買い終えていました。
ポイントで払うと気が大きくなるのはなぜ?
人はポイントとお金を別の「心の財布」で扱いがちだからです。航空会社のポイントの研究でも、ポイントとお金の価値の感じ方は人によって大きく違っていました。
ポイントを貯めるのは損なの?
損ではありません。ふだんの買い物で自然に貯まる分には問題ありません。気をつけたいのは、ポイントのために買い物を増やすことです。
出典
- Kivetz, R., Urminsky, O., & Zheng, Y. (2006). The Goal-Gradient Hypothesis Resurrected: Purchase Acceleration, Illusionary Goal Progress, and Customer Retention. Journal of Marketing Research, 43(1), 39-58. https://doi.org/10.1509/jmkr.43.1.39
- Chicago Booth Review. Going for the goal. https://www.chicagobooth.edu/review/going-goal
- Lim, F., Chun, S. Y., & Satopää, V. (2024). Loyalty Currency and Mental Accounting: Do Consumers Treat Points Like Money? Manufacturing & Service Operations Management, 26(5), 1878-1896. https://ideas.repec.org/a/inm/ormsom/v26y2024i5p1878-1896.html