夫婦・パートナーの家計の分担、どう決める?3つの方式の比較表と、収入比で分ける計算表・話し合い前の10項目チェック表

「家賃はどちらが払う?」「食費は半分ずつでいい?」。一緒に暮らし始めたときや、収入が変わったときに出てくる悩みです。この記事は、家計の分け方を3つの方式で比べる表と、収入の比率で分担額を出す計算表、話し合いの前に確かめる10項目のチェック表を用意しました。研究では、お金を全部まとめる夫婦ほど関係の満足度が高い傾向が報告されています。一方で、まとめ方の正解は1つではなく、家庭の事情で選ばれ方が変わることもわかっています。
3行でわかる
- 家計の分け方は「全部まとめる」「共通の支出だけまとめる」「別々に払う」の3つに大きく分かれる。オーストラリアの7,054組の調査では、共同口座と個人の口座を両方持つ「混合型」が多く、別々にする夫婦は増えていた。
- 6つの研究・計38,534人の研究では、お金を全部まとめる夫婦の方が、一部か全部を別にする夫婦より関係の満足度が高く、別れにくかった。収入が少ない・お金のストレスを感じている夫婦で、その傾向が特に強かった。
- 決める前に、共通の支出の合計と2人の手取りを書き出し、「折半」と「収入比」の2通りで分担額を計算する。10項目のチェック表で、話し合う順番を決めておくともめにくい。
01 悩みの正体家計の分担で、もめやすいのはなぜ?
家計の分担でもめやすいのは、どの支出を2人の分にするか、どの割合で出すかを決めないまま払い始めることが多いから。払う額の差が「不公平」と感じられ、不満が少しずつたまる。
お金の口論が起きやすい理由は夫婦のお金の口論の研究で、話し合いの進め方はパートナーとのお金の話し合いの工夫で紹介しました。この記事は、その話し合いで使う道具です。2人の数字を表に書き出し、方式ごとに比べて決めます。
02 研究とデータでわかっていることお金をまとめる夫婦は、うまくいきやすい?
お金を全部まとめる夫婦は、別にする夫婦より関係の満足度が高い傾向が、複数の研究で報告されている。ただし、まとめ方は子どもの有無や再婚かどうかなど家庭の事情で変わり、日本では欧米の分け方がそのまま当てはまらない面もある。
Huang・Perales・Western(2019)[1]
オーストラリアの夫婦・カップルの約79%が共同口座を持っていた。内訳は「共同口座だけ」が31%、「共同口座と2人それぞれの口座」が23%、「2人とも別々の口座だけ」が21%だった。2002年から2014年にかけて、共同口座だけの夫婦は33%から29%に減り、別々の口座だけの夫婦は19%から22%に増えた。
対象: オーストラリアの家計パネル調査(HILDA)の7,054組・15,379件の回答(2002〜2014年) / 限界: 口座の持ち方を調べた研究で、実際に誰が何を払っているかや、関係の満足度は測っていない。
Huang・Perales・Western(2019)[1]
同じ調査で、共同口座を持つ割合は、結婚している夫婦で86%、同棲のカップルで47%だった。子どもが1人増えるごとに共同口座を持つ見込み(オッズ)は1.32倍になり、一緒にいる期間が長いほど共同口座を持ちやすかった。どちらかが再婚・再パートナーの組は、共同口座を持つ見込みがはっきり低かった(0.04〜0.32倍)。
対象: 上と同じ / 限界: 家庭の事情と口座の持ち方の結びつきを示したもので、どの方式がよいかを決める研究ではない。
Gladstone・Garbinsky・Mogilner(2022)[2]
6つの研究(計38,534人)で、お金を全部まとめる夫婦は、一部か全部を別にしている夫婦より、関係の満足度が高く、別れにくかった。この傾向は、世帯の収入が少ない夫婦や、お金のストレスを感じている夫婦で特に強かった。実験・1回の調査・追跡の調査のいずれでも、また個人主義・集団主義のどちらの文化でも同じ結果が出た。
対象: 既存の調査データと新たに集めたデータを合わせた6研究 / 限界: この記事は論文の要旨(アブストラクト)で確認した内容に限った。満足度の差の大きさは確認できていない。
Addo・Sassler(2010)[3]
米国の子どものいる低所得のカップルでは、多くが共同口座を持ち、4分の1を超える組が個人の口座も持っていた。口座を持たない組も約1割あった。共同口座は、関係の質の多くの面で高い評価と結びついていた。その結びつきは、男性より女性でより一貫していた。
対象: 米国の低所得で子どものいるカップルの代表的な標本 / 限界: 要旨で確認した内容。1回の調査での結びつきで、共同口座が関係をよくしたとは言い切れない。
Çineli・Mugiyama(2023)[4]
日本の「消費生活に関するパネル調査」(1994〜2019年)を分析した研究。日本では、夫が収入を妻に渡し、毎月のおこづかいを受け取る形が伝統的に多いと説明している。子どもが生まれると妻が家計を管理する形が増え、共働きの夫婦では妻が管理する形が減っていた。欧米の分け方の型は、日本にはそのまま当てはまりにくいとしている。
対象: 日本の女性を追跡したパネル調査 / 限界: 要旨で確認した内容で、割合の数字は確認できていない。管理の方式と関係の満足度は調べていない。
03 今日からできる小さな一歩家計の分担額は、どう計算して決める?
分担額は、2人の分にする支出の合計と、それぞれの手取りを書き出して出す。「折半」と「収入比」の2通りで計算し、払った後に各自の手元に残る額を並べて比べると決めやすい。
まず、3つの方式の違いを確かめます。どれが正解というものではありません。研究でわかっていることと、向いている場面を並べました。
| 方式 | やり方 | 研究でわかっていること | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 全部まとめる | 2人の収入を1つの口座や財布に入れ、そこから全部払う | 関係の満足度が高く、別れにくい傾向。収入が少ない夫婦で特に強い [2] | 個人の買い物も相手に見える。おこづかいの額を決めておく |
| 共通費だけまとめる | 家賃・食費などの分だけ共同の口座に入れ、残りは各自で使う | 共同口座と個人の口座を両方持つ「混合型」に近い形。オーストラリアでは合わせて約半数がこの型だった [1] | 何を共通費にするかを、最初に表で決める |
| 別々に払う | 家賃は片方、光熱費はもう片方、のように項目ごとに分ける | 2人とも別々の口座だけの夫婦は増えている。同棲や再婚の組では共同口座を持たない形が多い(口座の持ち方の調査) [1] | 項目ごとの額が違うと、差が見えにくく不満がたまりやすい |
次に、分担額を計算します。下の数字は、計算のしかたを示すための例です。平均や相場ではありません。
| 項目 | Aさん | Bさん | 合計 |
|---|---|---|---|
| 手取りの月収 | 30万円 | 20万円 | 50万円 |
| 収入の比率(手取り÷合計) | 60% | 40% | 100% |
| 2人の分の支出(家賃・食費・光熱費など) | ― | 20万円 | |
| 折半の場合の負担 | 10万円 | 10万円 | 20万円 |
| 折半の場合に手元に残る額 | 20万円 | 10万円 | ― |
| 収入比の場合の負担(20万円×比率) | 12万円 | 8万円 | 20万円 |
| 収入比の場合に手元に残る額 | 18万円 | 12万円 | ― |
折半では、手元に残る額が20万円と10万円で2倍の差になります。収入比では18万円と12万円です。どちらが正しいという決まりはありません。2人が「これなら納得できる」と思える形を、数字を見ながら選びます。家事や育児の分担が大きく違う場合は、それも含めて話します。
話し合いの前に、下の10項目を2人で確かめます。「まだ決めていない」項目から順に話します。
| 番号 | 確かめること | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 2人の分にする支出(家賃・食費・光熱費・通信費など)を書き出した | 何を共通費にするかが、方式を選ぶ土台になる |
| 2 | 2人の分の支出の、毎月の合計額がわかる | 分担額の計算に必要 |
| 3 | お互いの手取りの月収を知っている | 折半と収入比を比べるのに必要 |
| 4 | 折半と収入比の2通りで計算した | 手元に残る額の差が見える |
| 5 | 車検・冠婚葬祭など、年に数回の出費の分け方を決めた | 毎月の表から漏れやすい |
| 6 | 相手に言わずに使ってよい額(おこづかい)を決めた | まとめる方式ほど、個人の出費が見えやすい |
| 7 | いくら以上の買い物なら、先に相談するかを決めた | 大きな出費の後の口論を減らせる |
| 8 | 2人のための貯金を、誰がいくら入れるか決めた | 支出の分担だけでは、貯金が後回しになりやすい |
| 9 | 子どもが生まれる・転職するなど、変わったときに見直すと決めた | 子どもの有無で口座の持ち方が変わる [1] |
| 10 | 次に見直す日を決めた | 収入や支出は毎年変わる |
2人の分の支出を書き出す
先月の明細から、家賃・食費・光熱費など、2人のために使った支出を拾って合計します。
所要 15分
折半と収入比の2通りで計算する
上の計算表に2人の手取りと合計を入れ、払った後に手元に残る額を並べます。
所要 10分
10項目を2人で確かめて、方式を1つ選ぶ
「まだ決めていない」項目から話します。決めた方式と金額は、2人が見られるメモに残します。
所要 30分
04 続けるためのコツ決めた分担を、長く続けるには?
決めた分担は、収入や家族の形が変わったときに見直す前提にしておく。共通費の口座と個人のおこづかいを分け、話し合いは数字の表を前に置いてすると続けやすい。
- 見直す日を先に決める。年に1回、昇給や更新の時期などに表を作り直します。子どもが生まれると口座の持ち方が変わりやすいことも報告されています[1]。
- おこづかいの額を、方式に関係なく決める。全部まとめる方式でも、相手に説明しないで使える額があると窮屈になりにくくなります。
- 「まとめる」が合わない時期もある。同棲や再婚では、別々の口座の方が選ばれやすいことがわかっています[1]。無理に全部まとめず、共通費だけまとめる形から試せます。
- お金の価値観の違いは、責めずに出し合う。育った家庭で身についたお金の考え方の違いは家族間のお金の価値観の記事、年に数回の出費の積み立て方は特別費の計算表で読めます。
05よくある質問
夫婦の生活費は、折半と収入比のどちらがいい?
研究で決まった正解はありません。折半と収入比の両方で計算し、払った後に手元に残る額を並べると、差がはっきり見えます。手取り30万円と20万円の夫婦が月20万円を分ける例では、折半だと手元に20万円と10万円、収入比だと18万円と12万円が残ります。2人が納得できる方を選びます。
共同口座を作ると、夫婦仲はよくなるの?
6つの研究・計38,534人の研究では、お金を全部まとめる夫婦の方が関係の満足度が高く、別れにくい傾向がありました。収入が少ない夫婦で特にその傾向が強かったと報告されています。ただし、口座を変えるだけで関係がよくなると言い切れるわけではありません。
財布を別々にしている夫婦は多い?
オーストラリアの7,054組の調査では、2人とも別々の口座だけの夫婦は2002年の19%から2014年の22%に増えていました。一方で約79%は共同口座を持っていました。日本では、夫が収入を渡して妻が管理し、夫がおこづかいを受け取る形が伝統的に多いとされ、欧米の分け方がそのまま当てはまらない面もあります。
話し合いがいつも口論になってしまうときは?
数字を表にして2人の前に置き、何を決めるかを1つに絞ってから話します。話し合いの進め方は、パートナーとのお金の話し合いの工夫の記事で詳しく紹介しています。
出典
- Huang, Y., Perales, F., & Western, M. (2019). To pool or not to pool? Trends and predictors of banking arrangements within Australian couples. PLoS ONE, 14(4), e0214019. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0214019
- Gladstone, J. J., Garbinsky, E. N., & Mogilner, C. (2022). Pooling finances and relationship satisfaction. Journal of Personality and Social Psychology, 123(6), 1293-1314. https://doi.org/10.1037/pspi0000388
- Addo, F. R., & Sassler, S. (2010). Financial Arrangements and Relationship Quality in Low-Income Couples. Family Relations, 59(4), 408-423. https://doi.org/10.1111/j.1741-3729.2010.00612.x
- Çineli, B., & Mugiyama, R. (2023). Money management over the course of marriage: Parenthood, employment and household financial organization in Japan. Advances in Life Course Research, 56, 100544. https://doi.org/10.1016/j.alcr.2023.100544

