手元の貯金、生活費の何か月分ある?「すぐ使えるお金」を数える計算表と、心の余裕の研究

「貯金はあるけれど、これで足りているのかわからない」。そう感じる人は少なくありません。手元の貯金が生活費の何か月分あるかは、すぐ使える預金を、毎月どうしても出ていく生活費で割ると出せます。この記事では、その計算表と、何か月分を目標にするかの決め方を、研究とあわせてまとめました。
3行でわかる
- 手元の貯金の「月数」は、すぐ使える預金÷毎月どうしても出ていく生活費で出せる。60万円÷月20万円なら3か月分。
- 英国の銀行利用者585人の研究では、すぐ使える預金が多い人ほど家計の安心感が高く、それが生活の満足度の高さにつながっていた。投資や支出、借金を考えに入れても残った。
- 米国の研究では、蓄えが5,000ドル未満の人は10万ドル以上の人に比べ、うつ・不安の兆候が出るオッズが2倍を超えていた。ただしどれも相関の研究で、貯金が原因とまでは言えない。
01 悩みの正体貯金があっても不安が消えないのはなぜ?
貯金があっても不安が消えないのは、「いくらあるか」は知っていても、「それで何か月暮らせるか」に置き換えていないことが多いから。金額のままでは、足りているかを判断する物差しがない。
50万円という金額は、生活費が月15万円の人と月30万円の人とでは、まったく違う意味になります。金額を「月数」に直すと、自分の備えの大きさが初めて比べられる形になります。
貯金が続かない、崩してしまうという悩みは、先取り貯金の研究や貯金を崩した後の立て直し方で扱いました。この記事は、今ある貯金を「数える」ための道具です。
02 科学的にわかっていることすぐ使えるお金は、心の余裕と関係がある?
関係がある。英国の研究では、普通預金などすぐ使えるお金が多い人ほど家計の安心感が高く、生活の満足度も高かった。米国の研究でも、蓄えが少ない人ほど、うつや不安の兆候が多かった。
Ruberton・Gladstone・Lyubomirsky(2016)[1]
普通預金と当座預金の残高(すぐ使えるお金)が多い人ほど、自分の家計を良い状態だと感じていた。その感じ方が、生活の満足度の高さにつながっていた。投資、支出の合計、借金の額を考えに入れても、この関係は残った。
対象: 英国の銀行の利用者585人。銀行が持つ口座の記録と、本人の回答を組み合わせた / 限界: 一時点の調査で、すぐ使えるお金が満足度を高めたという因果までは示していない。
Ettman ら(2024)[2]
蓄え(現金・預金に加え、株や年金なども含む)が5,000ドル未満の人は、10万ドル以上の人に比べ、うつの兆候のオッズが2.19倍、不安の兆候のオッズが2.05倍だった。蓄えの額を考えに入れると、世帯の年収は不安の兆候と関係していなかった。
対象: 米国の全国を代表する成人のパネル調査。2020〜2023年に4回調べた1,296人 / 限界: 観察研究で、うつ・不安は質問票による兆候の判定。蓄えには投資や年金も含まれる。
Ettman ら(2024)[3]
2020〜2022年の米国で、年収と蓄えの多い・少ないで4つの組に分けると、うつの可能性がある人の割合は、年収が多くても蓄えが少ない組で24.3%、年収が少なくても蓄えが多い組で19.4%だった。
対象: 米国の成人1,271人。年収6万5,000ドル以上、蓄え2万ドル以上を「多い」とした / 限界: 観察研究。新型コロナの流行期のデータ。
| 年収と蓄えの組 [3] | うつの可能性がある人の割合 |
|---|---|
| 年収が少ない・蓄えが少ない | 42.9% |
| 年収が多い・蓄えが少ない | 24.3% |
| 年収が少ない・蓄えが多い | 19.4% |
| 年収が多い・蓄えが多い | 14.0% |
Bufe ら(2022)[4]
米国の低・中所得の3,911人を2回調べた。すぐ使えるお金が中央値以下の人は、急な出費のあと家計の安心感の点数が2.4点下がった。中央値より多い人では、はっきりした低下は見られなかった(2つの組の差そのものは、はっきりしたものではない)。
対象: 2018年に税申告ソフトを使った米国の低・中所得の人。すぐ使えるお金の中央値は約2,750〜2,930ドル / 限界: 調査データ。何か月分あればよいかまでは示していない。
03 今日からできる小さな一歩手元の貯金が何か月分か、どう計算する?
手元の貯金の月数は、①すぐ使える預金の合計を出し、②毎月どうしても出ていく生活費を出し、③①を②で割ると出せる。生活費は「使っている額」ではなく「削れない額」で数える。
まず、自分の数字を入れる表です。右の列は計算のしかたを示す例で、平均ではありません。
| 項目 | 入れるもの | 例 |
|---|---|---|
| A すぐ使える預金 | 普通預金など、数日以内に引き出せるお金の合計。投資や定期の解約が必要なお金は入れない | 60万円 |
| B 固定費 | 家賃、光熱費、通信費、保険料、ローンの返済など毎月決まって出ていく額 | 12万円 |
| C 削れない変動費 | 食費や日用品のうち、切り詰めても必要な額 | 6万円 |
| D 毎月の生活費 | B+C | 18万円 |
| E 手元の貯金の月数 | A÷D | 約3.3か月分 |
次は、生活費ごとに「何か月分でいくらになるか」の早見表です。目標の額を決めるときに使います。
| 毎月の生活費 | 1か月分 | 3か月分 | 6か月分 |
|---|---|---|---|
| 10万円 | 10万円 | 30万円 | 60万円 |
| 15万円 | 15万円 | 45万円 | 90万円 |
| 20万円 | 20万円 | 60万円 | 120万円 |
| 25万円 | 25万円 | 75万円 | 150万円 |
Aを数える
通帳やアプリで、普通預金の残高を足します。すぐ引き出せないお金は、ここでは入れません。
所要 5分
BとCを出す
先月の明細から固定費を書き出し、食費などは「これ以下にはしにくい額」を見積もります。家計簿がなくても、引き落としの明細で足ります。
所要 15分
月数を出して、目標を1つ決める
A÷Dで今の月数を出します。下のチェック表を見て、目標の月数を決め、早見表で金額にします。
所要 5分
04 続けるためのコツ目標は何か月分にすればいい?
目標の月数に、研究で決まった正解はない。収入が止まりやすいか、頼れる人がいるかなど、自分の状況で決める。当てはまる項目が多いほど、多めの月数を目標にすると考えやすい。
- 収入が月によって大きく変わる。自営業、歩合、シフト制など。
- 1人の収入で家族を支えている。収入が止まったときの影響が大きくなります。
- 急な出費が起きやすいものを持っている。古い車や家電、持ち家の修理など。
- 困ったときに頼れる家族や知人がいない。米国の研究では、日々の出費で家族や友人の助けに頼れない人は、急な出費のあと家計の安心感がはっきり下がっていました。頼れる人では、はっきりした低下は見られませんでした [4]。
- 転職や引っ越しを考えている。収入の空白や初期費用に備えます。
- まず1か月分を目標にする。大きな目標より、届きそうな目標の方が続きやすくなります。目標の決め方は貯金の目標設定の研究で読めます。
- 手元の貯金を、使うお金と口座を分ける。同じ口座に入っていると、月数が見えにくくなります。
- 半年に1回、表のAとDを入れ替える。生活費が変わると、同じ貯金でも月数が変わります。
- 月数が増えた分だけ、自分の安心として受け取る。研究では、すぐ使えるお金と家計の安心感が結びついていました [1]。
05よくある質問
手元の貯金は、生活費の何か月分あればいい?
研究で決まった正解の月数はありません。収入が不安定、1人で家族を支えている、頼れる人がいないといった条件が多いほど、多めの月数を目標にすると考えやすくなります。まず1か月分を目標にし、届いたら次を決める方法もあります。
貯金の月数の計算に、投資のお金は入れていい?
この記事の計算表では入れません。急な出費のときに数日で引き出せる預金だけを数えます。英国の研究で生活の満足度と結びついていたのも、普通預金や当座預金などのすぐ使えるお金でした。
収入が多ければ、貯金が少なくても大丈夫?
研究では、収入だけで安心が決まるわけではありませんでした。米国の調査では、年収が多くても蓄えが少ない組の24.3%にうつの可能性があり、年収が少なくても蓄えが多い組の19.4%より高い割合でした。ただし相関の研究で、原因までは言えません。
生活費は、毎月使っている額で計算するの?
この記事では「削れない額」で計算します。固定費に、食費などの切り詰めても必要な額を足したものです。毎月使っている額で計算すると、今の貯金で暮らせる月数が少なめに出ます。
出典
- Ruberton, P. M., Gladstone, J., & Lyubomirsky, S. (2016). How your bank balance buys happiness: The importance of "cash on hand" to life satisfaction. Emotion, 16(5), 575-580. https://doi.org/10.1037/emo0000184
- Ettman, C. K., Thornburg, B., Abdalla, S. M., Meiselbach, M. K., & Galea, S. (2024). Financial assets and mental health over time. Scientific Reports, 14, 27370. https://doi.org/10.1038/s41598-024-76990-x
- Ettman, C. K., Cohen, G. H., Abdalla, S. M., Hatton, C. R., Castrucci, B. C., Bork, R. H., & Galea, S. (2024). Depression and assets during the COVID-19 pandemic: A longitudinal study of mental health across income and savings groups. PLoS One, 19(6), e0304549. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0304549
- Bufe, S., Roll, S., Kondratjeva, O., Skees, S., & Grinstein-Weiss, M. (2022). Financial Shocks and Financial Well-Being: What Builds Resiliency in Lower-Income Households? Social Indicators Research, 161(1), 379-407. https://doi.org/10.1007/s11205-021-02828-y


