物を手に入れても満たされないのはなぜか。「物欲」と幸福感の研究

欲しかった物を手に入れたのに、しばらくすると、また次の物が欲しくなる。買っても買っても、満たされた感じが続かない。そんな経験はないでしょうか。研究では、お金や物を手に入れることを重視する気持ち(物質主義)が強い人ほど、幸福感が低い傾向があることが、多くの調査で確かめられています。
3行でわかる
- 259の調査・753の結果をまとめた分析では、物やお金を重視する気持ちが強い人ほど、幸福感が低い傾向があった(相関 r=-0.19)。
- その関係は、浪費などの危険な買い物行動や自己評価の低さで特に強く、生活満足度では比較的弱かった。
- ブラジルの10代を対象にした研究では、感謝の気持ちを育てる取り組みで「物があれば幸せ」という考えが弱まった。
01物欲は、心の「別の空腹」のサインかもしれない
物やお金を重視することそのものが悪いわけではありません。ただ、それが生活の中心になると、人とのつながりなど、心が本当に求めているものが満たされにくくなると考えられています。
心理学では、人には「自分で選べている」「人とつながっている」「自分には力がある」と感じたいという基本的な心の欲求があると考えられています。
物を手に入れることに重きを置きすぎると、これらの欲求を満たす時間や関わりが後回しになりがちです。その結果、買い物で一時的に満たされても、すぐに次の物が欲しくなると考えられています。
研究でも、物欲と幸福感の低さの関係は、この心の欲求が満たされていないことで説明できる部分がありました。
02研究でわかっていること
物やお金を重視する気持ちが強いほど幸福感は低く、とくに衝動的な買い物や自己評価の低さと強く結びついていました。
Dittmarら(2014)[1]
259の調査(753の結果)をまとめた。物やお金を重視する価値観が強い人ほど幸福感が低かった(r=-0.19)。関係が特に強かったのは、浪費などの危険な買い物行動や自分への否定的な評価で(r=-0.28〜-0.44)、生活満足度では比較的弱かった。この関係は、心の基本的な欲求が満たされていないことで説明できる部分があった。
対象: 259の調査 / 限界: 多くが相関の研究で、どちらが原因かははっきりしない。
Weiら(2026)[2]
中国の専門学校生4,012人を調べた。物質主義が強い学生ほど、生活満足度が低く、うつ症状が強かった。この関係の一部は、心の基本的な欲求が満たされていないことで説明された。自分にやさしくする力(セルフ・コンパッション)が高い学生では、うつ症状との結びつきが弱まっていた。
対象: 中国の専門学校生4,012人 / 限界: 一時点の調査。
Štefkoら(2025)[3]
スロバキアの人たちを調べると、物質主義が強い人ほど、自分でコントロールしにくい強迫的な買い物の傾向が強かった。
対象: スロバキアのオンライン調査の回答者 / 限界: 一時点の調査。
Battistella-Lima & Veludo-de-Oliveira(2024)[4]
ブラジルの10代に感謝の気持ちを育てる取り組みを行うと、「物があれば幸せで、成功のしるしだ」という考えが弱まった。親を対象にした調査では、感謝をよく口にする親ほど、子どもが物欲的でないと感じていた。
対象: ブラジルの10代と親 / 限界: 準実験と調査で、厳密なランダム化比較試験ではない。
03今日からできる小さな一歩
物欲を無理に抑えるより、心の別の欲求に目を向けます。買う前に「本当に欲しいものは何か」を考えてみます。
買いたくなったら「何が満たされたいのか」を考える
欲しい物があるとき、その物で何を得たいのかを考えます。認められたい、さびしい、疲れているなど、物では満たされない気持ちが隠れていることがあります。
所要 1分
感謝していることを3つ書く
今すでに持っているもの、周りの人にしてもらったことで、ありがたいと思うことを3つ書きます。感謝の取り組みで物欲が弱まった研究があります。
所要 3分
人と過ごす時間の予定を入れる
友人や家族と会う、話すなど、人とつながる時間を先に予定に入れます。
所要 5分
04続けるためのコツ
物を買うことを我慢しすぎる必要はありません。物以外の満たされ方を少しずつ増やしていくと、買い物との付き合い方も変わっていきます。
- SNSで他人の持ち物を見る時間を減らすと、欲しい気持ちが落ち着くことがあります。
- 「買ったらどう感じるか」を買う前と1週間後で比べると、満足が続く物と続かない物の違いが見えてきます。
- 自分を責めず、やさしく接することも大切です。
- 買い物がやめられず、借金や生活の苦しさにつながっているときは、消費生活センター(188)に相談できます。
05よくある質問
物欲と幸福感について、よく検索される疑問に研究の範囲で答えます。
物を買っても満たされないのはなぜ?
物を手に入れることを重視しすぎると、人とのつながりなどの心の欲求が後回しになり、満たされにくくなると考えられています。研究でも、物欲と幸福感の低さの関係の一部は、これで説明されていました。
物欲が強い人は不幸なの?
そうとは限りませんが、傾向はあります。259の調査をまとめた分析では、物やお金を重視する人ほど幸福感が低い傾向がありました。ただし相関の研究で、因果ははっきりしていません。
物欲を減らす方法はある?
感謝の気持ちを育てる取り組みで、「物があれば幸せ」という考えが弱まった研究があります。
物欲と衝動買いは関係ある?
関係があります。物質主義が強い人ほど、強迫的な買い物の傾向が強いことが示されています。
出典
- Dittmar, H., Bond, R., Hurst, M., & Kasser, T. (2014). The relationship between materialism and personal well-being: A meta-analysis. Journal of Personality and Social Psychology, 107(5), 879-924. https://doi.org/10.1037/a0037409
- Wei, Z., Miao, H., & Guo, C. (2026). Materialism and Subjective Well-Being Among Chinese Higher Vocational College Students. European Journal of Investigation in Health, Psychology and Education, 16(7), 99. https://doi.org/10.3390/ejihpe16070099
- Štefko, R., Rigelský, M., Ondrijová, I., & Kráľová, L. (2025). Exploring the relationship between materialism, consumer ethnocentrism, and compulsive buying. Frontiers in Psychology, 16, 1680164. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2025.1680164
- Battistella-Lima, S. V., & Veludo-de-Oliveira, T. M. (2024). Gratitude as an antidote to materialism in young consumers. Frontiers in Psychology, 15, 1352729. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2024.1352729
