お金と幸福度

収入が増えても貯金が増えないのはなぜか。生活水準の適応の研究

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Photo: Cardinator25 / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(家計・投資の助言ではありません。出典は末尾)。

昇給したはずなのに、なぜか手元に残るお金は変わらない。これは自制心の問題というより、生活水準が収入に合わせて自動的に膨らんでいく「適応」という仕組みによるものだと研究でわかっている。

3行でわかる

  1. 宝くじの当選者を対象にした調査では、当選金のうち貯蓄に回された割合はわずか16%にとどまった。
  2. 幸福度は新しい生活水準にすぐ「慣れて」しまい、元の水準に戻りやすいことが古典的な研究で示されている。
  3. 収入の増加分を「使える金額」として意識する前に取り分ける仕組みが、適応を防ぐ有効な対策になる。

01収入が増えると、支出も無意識に増える

新しい収入・生活水準はすぐに「当たり前」になり、それ以前の基準には戻りたくなくなる。

1978年に発表された古典的な研究では、宝くじの高額当選者と、そうでない人々の幸福度を比較した。結果、当選からしばらく経った時点での幸福度には、大きな差が見られなかった。新しい生活水準はすぐに基準点として「当たり前」になり、そこからの幸福感の上乗せは長続きしない。同じ理屈が支出にも当てはまる。収入が増えると生活の基準そのものが上がり、以前の支出水準には戻りにくくなる。

02研究では何がわかっているのか?

臨時収入も定期収入も、思ったより多くの割合がそのまま生活水準の底上げに消えていく。

Brickman・Coates・Janoff-Bulman(1978)[1]

宝くじの高額当選者22人、比較対象群、対麻痺(事故による下半身麻痺)を負った29人の幸福度を比較した研究。当選者は比較対象群と比べて、幸福度に大きな差が見られなかった。新しい生活水準への「適応」が、当初期待されたほどの幸福度の上乗せを打ち消してしまうことを示した。

対象: 宝くじ高額当選者22人・比較対象群・対麻痺を負った人29人 / 限界: サンプル数が非常に少なく、後続研究では条件によって結果に幅があることも報告されている。

Imbens・Rubin・Sacerdote(2001)[2]

宝くじ当選者を対象にした調査データの分析。当選金のうち実際に貯蓄に回された割合は、平均してわずか16%にとどまり、残りの大部分は消費に回っていたことを確認した。臨時収入であっても、多くが生活水準の底上げに使われる傾向が示された。

対象: 宝くじ当選者を対象にした調査データ(American Economic Review掲載) / 限界: 米国の宝くじ当選者データに基づくもので、給与の昇給など段階的な収入増加とは状況が異なる。

Kahneman・Deaton(2010)[3]

米国内45万件超の調査回答を分析。日々の感情的な幸福感は、年収がおよそ7万5,000ドルに達するまでは所得とともに上昇するが、それを超えるとほとんど上昇しなくなることを確認した。収入を増やすこと自体は、一定の水準までしか感情的な幸福感の上昇につながらない。

対象: 米国内45万件超のギャラップ社調査データ / 限界: 米国のデータであり、物価水準の異なる他国にそのまま当てはめることはできない。

03今日からできる小さな一歩

増えた収入を「見える化」する前に、機械的に取り分けてしまう。

1

昇給額を確認したら、その場で貯蓄額を決める

昇給後の手取り額を見る前に、増えた分のうち何割を貯蓄に回すかを先に決めておく。

所要 3分

2

増えた分だけ自動積立の金額を上げる

給与振込口座から自動で積み立てる金額を、昇給分と同じだけ引き上げる設定に変更する。

所要 5分

3

「増えた実感」を使い切る前に一旦保留する

昇給直後の大きな買い物は1か月保留し、本当に必要かを落ち着いてから判断する。

所要 継続的に意識

04続けるためのコツ

「収入が増えたら生活の質を上げてはいけない」と我慢するのではなく、増えた分の一部だけを先に取り分けるルールにすると続けやすい。

05よくある質問

宝くじに当たった人は幸せになれないのですか?

1978年の研究では、当選からしばらく経った時点での幸福度は、当選していない人と比べて大きな差がないという結果が示されました。ただしサンプル数が少ない研究であり、その後の研究では条件によって差が出ることも報告されています。「一時的に幸福度は上がるが、やがて元の水準に戻りやすい」という適応の傾向自体は繰り返し確認されています。

昇給したらまず何をすればいいですか?

昇給額を使う前に、その一部を自動的に貯蓄や投資に回す設定を先に済ませておくことが効果的です。手元に「使える金額」として見える前に取り分けておくことで、生活水準が上がった分だけ支出も増える適応を防ぎやすくなります。

出典

  1. Brickman, P., Coates, D., & Janoff-Bulman, R. (1978). Lottery Winners and Accident Victims: Is Happiness Relative? Journal of Personality and Social Psychology, 36(8), 917-927.
  2. Imbens, G. W., Rubin, D. B., & Sacerdote, B. I. (2001). Estimating the Effect of Unearned Income on Labor Earnings, Savings, and Consumption: Evidence from a Survey of Lottery Players. American Economic Review, 91(4), 778-794. https://www.aeaweb.org/articles?id=10.1257/aer.91.4.778
  3. Kahneman, D., & Deaton, A. (2010). High income improves evaluation of life but not emotional well-being. Proceedings of the National Academy of Sciences, 107(38), 16489-16493. https://stafforini.com/works/kahneman-2010-high-income-improves/