貯金が続かない

貯金アプリより「先取り貯金」が続くのはなぜ?自動化の研究

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19th century Dutch money box
Photo: Prolete / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開されている研究論文や公的機関の資料をAI(Claude)が調べ、内容を確認して整理しました。SEADICEが独自に実験したものではありません(家計・投資の助言ではありません)。出典は末尾にあります。

貯金しようと決めても、給料が入ると結局使い切ってしまう。これは意志の弱さではなく、「お金を見てから貯金するかどうかを判断する」という仕組み自体に問題があると、行動経済学の研究でわかっています。給料が入る前に自動で天引きする「先取り貯金」が続きやすいのには、はっきりした理由があります。

3行でわかる

  1. 昇給のたびに自動で貯蓄率が上がる仕組みにしたプログラムでは、貯蓄率が3.5%から13.6%まで上昇し、4年後も約80%が継続していました。
  2. 一方、貯金用の口座をただ自動開設しただけでは、統計的に意味のある貯金額の増加は見られませんでした。
  3. 利息すら付かない普通の口座を持てるようにしただけでも、お金を手元から離すことで投資や支出が増えた実験もあります。

01なぜ「先取り貯金」の方が続くのか?

貯金が続かないのは意志の弱さではなく、「お金を見る前に減らす」仕組みがあるかどうかの違いです。

給料を受け取ってから貯金しようとすると、その都度「今回はやめておこう」という判断の機会が生まれ、目の前の欲しいものへの誘惑に負けやすくなります。最初から天引きされていれば、その判断自体が発生しないため、意志力を使わずに続けられます。行動経済学ではこれを「デフォルト(初期設定)の力」と呼びます。

02研究では何がわかっているのか?

「自動化」の効果は強力ですが、口座を分けるだけの中途半端な自動化では効果が出にくいことも確認されています。

Thaler & Benartzi(2004)[1]

「Save More Tomorrow」というプログラムでは、昇給が起きるたびに貯蓄率が自動で上がる仕組みを導入しました。この提案を受け入れた人は78%にのぼり(即座の増額提案を受け入れた人はわずか28%)、参加者の平均貯蓄率は3.5%から13.6%まで上昇しました。4年後も約80%が制度に残っていました。

対象: 米国3社の従業員(1990年代後半〜2000年代初頭に導入) / 限界: 給与天引きができる雇用者向けの制度で、フリーランス等には直接適用しにくい。

Center for Advanced Hindsight(2018、Duke Credit Unionとの共同実験)[2]

新規会員に「Rainy Day Savings」という名前の口座を自動開設しただけの条件と、自由に口座開設できる条件を比較しました。口座を保持した人の間でわずかな貯金行動の増加は見られたものの、統計的に意味のある差は確認されませんでした。

対象: Duke Credit Unionの新規会員約1,500人(うち750人が対象群) / 限界: 単発の実験であり、自動送金の設定まで組み合わせた場合の効果は別途検証が必要。

Dupas & Robinson(2013)[3]

利息の付かない普通の銀行口座にアクセスできるようにしたところ、ケニア農村部の市場で働く女性たちは、より多く貯蓄し、生産的な投資や私的な支出を増やしました(自転車タクシー運転手の男性には同様の効果は見られませんでした)。

対象: ケニア農村部の市場の女性商人と自転車タクシー運転手 / 限界: 発展途上国の現金経済という特殊な文脈での結果であり、先進国での送金・貯金インフラが整った環境にそのまま当てはまるとは限らない。

03先取り貯金を始めるには何をすればいいのか?

口座を分けるだけで終わらせず、自動送金の設定までセットで行うことが重要です。

1

給料日の翌日に自動振替を設定する

給与振込口座から貯金用口座へ、決まった金額を自動で送金するよう銀行アプリで設定する。

所要 5分

2

昇給・ボーナスの一部を先に配分するルールを決める

Save More Tomorrow方式にならい、「昇給分の半分は自動で貯蓄に回す」等、あらかじめ決めておく。

所要 10分

3

口座を分けたら、必ず自動送金まで完了させる

口座開設だけで満足せず、振替設定の画面まで進んで完了ボタンを押したか確認する。

所要 3分

04この対策を続けるコツは何か?

最初から大きな金額を天引きしようとせず、小さく始めて慣れたら増やすのが続けやすい方法です。

05よくある質問

先取り貯金はどれくらい効果がありますか?

Thaler & Benartzi(2004)のSave More Tomorrowプログラムでは、昇給のたびに自動で貯蓄率が上がる仕組みにしたところ、参加者の貯蓄率が平均3.5%から13.6%まで上昇し、4年後も約80%が継続していました。

貯金用の口座を分けるだけでも効果がありますか?

口座を分けるだけでは十分でないことが実験で示されています。デューク大学信用組合の実験では、新規会員に「Rainy Day Savings」口座を自動開設しただけでは、統計的に意味のある貯金額の増加は確認されませんでした。自動送金の仕組みとセットにする必要があります。

利息の付かない口座でも貯金の効果はありますか?

あります。Dupas & Robinson(2013)によるケニアでの実験では、利息の付かない普通の銀行口座にアクセスできるようにしただけで、市場で働く女性たちの生産的投資や支出が増えました。お金を物理的に手元から離せること自体に意味があると考えられます。

なぜ意志力に頼る貯金は続かないのですか?

給料を受け取ってから貯金しようとすると、そのたびに「今回はやめておこう」という判断の機会が生まれ、誘惑に負けやすくなります。最初から天引きされていれば、その判断自体が発生しないため続きやすくなります。

今すぐできる一番簡単な対策は何ですか?

給与振込口座から貯金用口座への自動振替を、給料日の翌日に設定することです。金額は少額から始めて構いません。口座を分けるだけで満足せず、自動送金の設定まで完了させることが重要です。

出典

  1. Thaler, R. H., & Benartzi, S. (2004). Save More Tomorrow™: Using Behavioral Economics to Increase Employee Saving. Journal of Political Economy, 112(S1), 164-187. https://www.journals.uchicago.edu/doi/10.1086/380085
  2. Center for Advanced Hindsight (2018). Increasing Saliency and Mental Accounting by Auto-Opening Rainy Day Savings Accounts(Duke Credit Unionとの共同実験). https://advanced-hindsight.com/case-study/increasing-saliency-and-mental-accounting-by-auto-opening-rainy-day-savings-accounts/
  3. Dupas, P., & Robinson, J. (2013). Savings Constraints and Microenterprise Development: Evidence from a Field Experiment in Kenya. American Economic Journal: Applied Economics, 5(1), 163-192. https://www.aeaweb.org/articles?id=10.1257/app.5.1.163