予算が崩れて赤字になった月、どう立て直す?「どうにでもなれ」で投げ出さない手順と、来月の予算の直し方

月の半ばで予算を使い切ってしまった。家計簿を開くと赤字の数字が並んでいて、「今月はもういいや」と思ってしまう。そんな経験は珍しくありません。研究では、1か月の出費を少なく見積もる人は6割を超えていました。予算が崩れるのは、意志の弱さだけが理由ではありません。この記事では、赤字になった月の残りをどう過ごし、来月の予算をどう直すかを、手順と計算表にまとめました。
3行でわかる
- 予算が崩れた月は「どうにでもなれ」と投げ出さず、残ったお金を残りの日数で割って、1日に使える額を出し直す。
- カナダの187人の研究では、63.2%が1か月の出費を少なく見積もり、出費の予想は実際より平均15.5%少なかった。来月は「いつもと違う出費」の理由を先に書くと、見積もりのずれが縮んだ。
- お金の使い方の工夫をまとめた29の研究では、前もって準備する工夫と、誘惑が来たその場で使う工夫の効果は同じくらいだった。
01 悩みの正体予算を1回破ると、なぜ全部投げ出したくなる?
予算を1回破ると投げ出したくなるのは、「もう崩れたのだから同じ」と考えてしまうため。食事制限の研究で「どうにでもなれ効果」と呼ばれてきた考え方で、お金の予算でも同じ考えが浮かぶことがある。
この呼び名は、食事制限をしている人の研究から生まれました。「ダイエットはもう破れたのだから、今は食べて楽しもう」という考え方です [4]。お金の予算でも、赤字の数字を見た後に同じ考えが浮かぶことがあります。
節約を頑張った反動で使いすぎる仕組みは節約疲れの記事で扱いました。この記事は、もう赤字になってしまった月の話です。
02 科学的にわかっていること予算が崩れるのは、自分だけの失敗?
予算が崩れるのは自分だけの失敗ではない。研究では、多くの人が1か月の出費を少なく見積もり、いつもと違う出費を思い浮かべにくいことがわかっている。誘惑が来たその場で使う工夫にも、前もって準備する工夫と同じくらいの効果があった。
Howard ら(2022)[1]
カナダの信用組合の組合員に、5週間、出費の予想と実際を記録してもらった。1か月の出費の予想は、実際の出費より平均416.77ドル(実際の額の15.5%)少なかった。5週目に「来週の出費がいつもと違いそうな理由」を挙げてもらった組では、少なく見積もった人が47.6%で、挙げなかった組の66.2%より少なかった。
対象: カナダの187人(平均51.1歳) / 限界: この方法は、たまに大きな出費が出るという偏りが小さい場合には効きにくいと著者は述べている。
Davydenko ら(2021)[2]
出費を減らし貯金を増やす工夫を試した29の研究(12種類の工夫)をまとめた。工夫には中程度の効果があった(効果量 d = 0.57)。前もって準備する工夫(d = 0.56)と、誘惑が来たその場で使う工夫(d = 0.58)の効果は、ほぼ同じだった。
対象: 合計12,316人。研究の53.6%は米国、65.5%は大学生が対象 / 限界: 研究ごとのばらつきが大きく、効果が出た研究ほど発表されやすい偏りの可能性も示された。
Despard ら(2020)[3]
米国の全国調査(2009〜2018年の4回)を分析し、緊急用のお金を持っている家庭の特徴を調べた。最も強く結びついていたのは貯蓄用の口座を持っていることで、緊急用のお金を持つ確率が25〜29%高かった。論文が引く別の調査では、急な出費があった家庭の70%が翌年にも急な出費にあっていた。
対象: 米国の全国調査の回答者 / 限界: 一時点ごとの調査で、口座を持つことが原因とまでは言えない。
03 今日からできる小さな一歩赤字になった月の残り、どう過ごす?
赤字になった月は、①残ったお金を残りの日数で割り、1日に使える額を出す、②赤字の理由を3つに仕分ける、③来月の予算を「いつもと違う出費」を書いてから作る、の順に進める。
まず、残りの日数で使える額を出し直します。数字は例です。
| 項目 | 書き方 | 例 |
|---|---|---|
| A 今の手元のお金 | 財布と、生活費の口座の残高 | 32,000円 |
| B 月末までに確実に出ていくお金 | 引き落とし、家賃、支払い期日のあるもの | 18,000円 |
| C 自由に使えるお金 | A − B | 14,000円 |
| D 次の収入日までの日数 | 今日を含めて数える | 10日 |
| E 1日に使える額 | C ÷ D | 1,400円 |
Cがマイナスになるときは、支払いを待ってもらえるか、使える制度がないかを早めに確かめます(04の相談先へ)。
1日に使える額を出し、財布かメモに書く
上の表のEを出します。予算を「月の額」から「1日の額」に直すと、残りの日数の過ごし方が見えます。その場で使える工夫も、前もって準備する工夫と同じくらい効果がありました [2]。
所要 10分
赤字の理由を3つに仕分ける
「いつもと違う出費(冠婚葬祭・修理・病院など)」「毎月の見積もりが低すぎた」「予定外の使いすぎ」に分けます。前の2つなら、予算の作り方を直す問題です。
所要 10分
来月の予算は、「いつもと違う出費」を3つ書いてから作る
「来月の出費がいつもと違いそうな理由」を3つ書き、その額を足してから予算を決めます。研究では、理由を挙げた組で少なく見積もる人が減りました [1]。
所要 15分
予算に「予備費」の行を作る
急な出費は続けて起きやすいことが報告されています [3]。少額でも予備費を分けておくと、次に何かあっても、予算全体が崩れにくくなります。年に数回の出費の積み立て方は特別費の計算表へ。
所要 5分
04 続けるためのコツ来月また赤字にしないには、どうする?
来月また赤字にしないためには、1か月を1回の成績にせず、週ごとに残りを確かめる。赤字が何か月も続く、借りて埋めているときは、一人で抱えずに公的な窓口へ相談する。
- 1回の赤字で予算をやめない。「どうにでもなれ」と思ったら、表のEだけ出し直します。予算をやめるより、額を直す方が次につながります。
- 週に1回、残りを確かめる。週ごとの出費でも、少なく見積もる人は毎週6割前後いました(59.5〜69.3%)[1]。月末にまとめて見るより、ずれに早く気づけます。
- 記録は軽くてよい。家計簿が続かない理由と負担を減らす方法は家計簿の記事にまとめました。
- 赤字をカードの分割やリボ、借入で埋め続けない。返済が重なると、翌月の予算がさらに崩れます。リボ払いの立て直し方はリボ払いの手順の記事へ。
| 困っていること | 相談先 | 連絡先・内容 |
|---|---|---|
| 仕事や収入が減って生活が苦しい | 自立相談支援機関(生活困窮者自立支援制度の窓口) | お住まいの自治体に置かれている [5] |
| 契約や支払いのトラブル、どこに相談すればいいか分からない | 消費者ホットライン | 188。近くの消費生活センターなどを案内 [6] |
| 借金の問題で使える法制度や窓口を知りたい | 法テラス・サポートダイヤル | 0570-078374。平日9〜21時、土曜9〜17時(祝日・年末年始を除く)[7] |
| カードローンやキャッシングなど、貸金業者からの借入の相談 | 日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター | 0570-051-051。平日9〜17時 [8] |
05よくある質問
家計が赤字になった月、まず何をすればいい?
まず、手元のお金から月末までに確実に出ていくお金を引き、次の収入日までの日数で割って、1日に使える額を出してください。そのうえで、赤字の理由を「いつもと違う出費」「見積もりが低すぎた」「予定外の使いすぎ」の3つに分けると、来月に直すところが見えてきます。
予算を立てても、いつも足りなくなるのはなぜ?
多くの人が出費を少なく見積もるためです。カナダの187人の研究では、63.2%が1か月の出費を少なく見積もり、出費の予想は実際より平均15.5%少なくなっていました。いつもと違う出費を思い浮かべにくいことが理由の1つとされています。
月の途中で予算が崩れたら、来月からやり直した方がいい?
月の途中からでも立て直せます。29の研究をまとめた分析では、前もって準備する工夫と、その場で使う工夫の効果はほぼ同じでした。残りの日数で1日に使える額を出し直すところから始められます。
赤字が続いて生活が苦しいときは、どこに相談できる?
仕事や収入が減って生活が苦しいときは、お住まいの自治体の自立相談支援機関(生活困窮者自立支援制度の窓口)に相談できます。借金の返済が苦しい場合は、法テラス・サポートダイヤル(0570-078374)で使える制度や窓口を案内しています。
出典
- Howard, R. C., Hardisty, D. J., Sussman, A. B., & Lukas, M. F. (2022). Understanding and Neutralizing the Expense Prediction Bias: The Role of Accessibility, Typicality, and Skewness. Journal of Marketing Research, 59(2), 435-452. https://doi.org/10.1177/00222437211068025
- Davydenko, M., Kolbuszewska, M., & Peetz, J. (2021). A meta-analysis of financial self-control strategies: Comparing empirical findings with online media and lay person perspectives on what helps individuals curb spending and start saving. PLoS ONE, 16(7), e0253938. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0253938
- Despard, M. R., Friedline, T., & Martin-West, S. (2020). Why Do Households Lack Emergency Savings? The Role of Financial Capability. Journal of Family and Economic Issues, 41, 542-557. https://doi.org/10.1007/s10834-020-09679-8
- Polivy, J., & Herman, C. P. (2020). Overeating in Restrained and Unrestrained Eaters. Frontiers in Nutrition, 7, 30. https://doi.org/10.3389/fnut.2020.00030
- 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059425.html
- 消費者庁「消費者ホットライン」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/
- 法テラス「お電話でのお問合せ(法テラス・サポートダイヤル)」 https://www.houterasu.or.jp/site/soudanmadoguchi-houseido/support-dial.html
- 日本貸金業協会「貸金業相談・紛争解決センター」 https://www.j-fsa.or.jp/personal/


