ブランド品や「見せる消費」をしたくなるのはなぜか。「埋め合わせの消費」の研究

人から良く見られたくて、少し無理をしてブランド品を買ってしまう。仕事でうまくいかなかった日に、ついいつもより高い物を選んでしまう。そんな経験はないでしょうか。研究では、人と比べる気持ちや、自分ではどうにもできないという感覚が、それを埋め合わせるための消費につながることがわかってきました。
3行でわかる
- 中国の大学生469人の調査では、子どもの頃の家庭の経済状況が低いと感じていた学生ほど、人と比べる気持ちと物を重視する価値観を通じて、見せびらかすための消費が多かった。
- 高齢の旅行者328人の調査では、デジタル化から取り残されていると感じる人ほど、自分でコントロールできない感覚を通じて、埋め合わせの消費が多かった。自分を肯定する気持ちが強い人では、この傾向が弱まった。
- インドネシアの若者300人の調査(査読前)では、お金の不安が強い人ほど、埋め合わせの消費が多かった。
01買い物で、心の「足りない感じ」を埋めようとすることがある
自分に何かが足りないと感じたとき、人はそれを物で埋めようとすることがあります。これを「埋め合わせの消費」と呼びます。ブランド品など人に見せる物は、その対象になりやすいと考えられています。
人は、周りの人と比べて自分が劣っていると感じたり、自分ではどうにもできない状況に置かれたりすると、心のバランスを取り戻そうとします。
そのとき、地位や豊かさを表す物を手に入れることで、「自分は大丈夫だ」と感じようとすることがあります。ブランド品や高級品は、人に見せることでその感覚を得やすい物です。
ただ、物で埋めた満足は長続きしにくく、根っこにある「足りない感じ」は残りやすいと考えられています。
02研究でわかっていること
人と比べる気持ちや物を重視する価値観、コントロールできない感覚、お金の不安が、見せるための消費や埋め合わせの消費と結びついていました。
Liら(2025)[1]
中国の大学生469人を調べた。子どもの頃の家庭の経済状況が低いと感じていた学生ほど、人と比べる気持ちが強く、物を重視する価値観も強く、その結果として見せびらかすための消費が多かった。
対象: 中国の大学生469人 / 限界: 一時点の調査で、因果は確かめていない。
Shiら(2026)[2]
中国の高齢の旅行者328人を調べた。デジタル化から取り残されていると感じる人ほど、自分でコントロールできない感覚が強く、それが埋め合わせの消費につながっていた。自分を肯定する気持ちが強い人では、この流れが弱まっていた。
対象: 中国の高齢旅行者328人 / 限界: 一時点の調査。
Aryadiら(2026、査読前)[3]
インドネシアの都市部に住む若者300人を調べた。税金をめぐるニュースで家計への圧力を感じた人ほど、お金の不安が強く、そのお金の不安が埋め合わせの消費と結びついていた。
対象: インドネシアの若者300人 / 限界: まだ専門家の査読を受けていない論文で、一時点の調査。
03今日からできる小さな一歩
高い物が欲しくなったら、「何を埋めたいのか」を考えます。物以外で、その気持ちを満たす方法も用意しておきます。
「誰に見せたいか」を考える
ブランド品が欲しくなったら、それを誰に見せたいのか、見せてどう思われたいのかを考えます。自分のための物か、人の目のための物かが見えてきます。
所要 1分
自分を肯定できることを書き出す
今日うまくできたこと、自分の良いところを3つ書き出します。研究では、自分を肯定する気持ちが強いと、埋め合わせの消費が弱まっていました。
所要 3分
高い物は1週間おいてから買う
欲しくなった高い物は、メモだけして1週間待ちます。そのときの気分で買ったものかどうかがわかります。
所要 1週間
04続けるためのコツ
好きなブランドを楽しむことは悪いことではありません。ただ、買い物で気持ちを埋めることが続くときは、その気持ちに目を向けてみましょう。
- SNSで他人の持ち物を見る時間を減らすと、比べる気持ちが落ち着きやすくなります。
- 無理なローンや分割払いでブランド品を買っていないか確認します。
- 自分がコントロールできることに目を向けると、気持ちのバランスを取り戻しやすくなります。
- ブランド品の購入で借金が増えているときは、消費生活センター(188)に相談できます。
05よくある質問
ブランド品や埋め合わせの消費について、よく検索される疑問に研究の範囲で答えます。
ブランド品が欲しくなるのはなぜ?
人と比べる気持ちや、物を重視する価値観が関係していると考えられています。大学生469人の調査でも、比べる気持ちと物を重視する価値観が、見せびらかすための消費と結びついていました。
ストレスがあると高い物を買いたくなるのはなぜ?
自分でコントロールできない感覚や、お金の不安を埋め合わせようとするためと考えられています。研究でも、こうした感覚が埋め合わせの消費につながっていました。
埋め合わせの消費を減らすには?
自分を肯定できることを書き出すなど、自分を認める気持ちを高めることが役立つ可能性があります。研究では、自分を肯定する気持ちが強い人で、埋め合わせの消費が弱まっていました。
ブランド品を買うのは悪いこと?
悪いことではありません。自分が好きで、無理のない範囲で楽しむなら問題ありません。気をつけたいのは、気持ちを埋めるための買い物が続くことです。
出典
- Li, X., Feng, Y., Xue, Z., & Yao, S. (2025). Effect of childhood socioeconomic status on conspicuous consumption of college students: the chain mediating roles of social comparison and materialism. BMC Psychology, 13, 970. https://doi.org/10.1186/s40359-025-03148-3
- Shi, J., Li, Y., & Deng, W. (2026). The psychological compensation effect: perceived digital exclusion, perceived lack of control, and their impact on consumption behaviors of elderly tourists. Frontiers in Psychology, 17, 1764922. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1764922
- Aryadi, A. R., et al. (2026). Pressure Without Price? Perceived Fiscal Pressure and Compensatory Consumption in VAT Discourse. Research Square(査読前論文). https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-8735260/v1