投資の「自信過剰」や「損したくない気持ち」に気づくには?記憶・値動きの見方・暴落時を振り返る8つの質問

「自分はわりと上手に投資できている」。そう感じていても、その感覚が記憶のずれから来ていることがあります。研究では、投資家は過去の成績を実際よりよく思い出し、そのずれが大きい人ほど自信過剰で、売り買いの回数も多い傾向がありました。この記事は、記録を見ながら答える8つの質問で、自分のくせに気づくためのものです。特定の商品や売買のタイミングを勧めるものではありません。
3行でわかる
- 米国の投資家の研究では、過去の取引の成績を実際より高く思い出し、勝った取引ほど覚えている傾向があった。記録を見直してもらうと、自信過剰と売買したい気持ちが下がった。
- 日本の個人投資家の19万件超のデータでは、知識に自信があると答えたのに正答が平均より少ない人は、2020年3月の急落時に株や投資信託を売りやすかった。
- 値動きの結果をひんぱんに知らされると、人は投資額を減らしやすい(スペインの96人の実験)。見る回数も、くせを映す鏡になる。
01 悩みの正体投資の自信過剰は、なぜ自分では気づきにくい?
投資の自信過剰が気づきにくいのは、自信のもとになる「過去の成績の記憶」そのものが、よい方にずれやすいから。記憶だけで振り返ると、ずれたまま「自分はうまい」と確かめてしまう。
損を嫌う気持ちのしくみは損失回避の研究で、投資を始める前のためらいは少額投資が怖い心理で扱いました。この記事は、すでに投資をしている人が、自分のくせに気づくための振り返りです。
02 科学的にわかっていること投資家の記憶や自信は、どれくらいずれる?
投資家は過去の成績を実際より高く思い出し、負けた取引を忘れやすいことが米国の研究で示された。日本の調査では、知識に自信があるのに正答が少ない人は、急落時に売りやすかった。
Walters・Fernbach(2021)[1]
実際に株を持つ米国の投資家に、影響の大きかった取引の成績を思い出してもらい、あとで取引の記録と照らし合わせた。投資家は成績を実際より高く思い出し、負けた取引より勝った取引を思い出しやすかった。このずれが大きい人ほど、自信過剰で、売買の回数も多かった。最初の研究の411人は、この先12か月で市場の平均を平均13.0ポイント上回れると見込んでいた。
対象: 株を持つ投資家(研究1は米国の411人、研究2はオンラインで集めた144人、研究3は投資掲示板で集めた366人) / 限界: 人によく見せたい気持ちで高めに答えた可能性は、完全には否定できないと著者らは述べている。
Walters・Fernbach(2021)研究3[1]
オンラインの投資掲示板で集めた366人を2つの組に分けた。過去の取引を記憶で答える組と、記録を調べて答える組だ。記録を調べた組の方が、自信過剰と、ひんぱんに売買したい気持ちが低かった。
対象: 投資の経験がある人 / 限界: 記録を見ると自分への評価が下がったためで、記憶とは別の理由の可能性もあると著者らは述べている。
Bawalle ら(2025)[2]
国内のネット証券の利用者に2023年11〜12月に行った調査の、19万1,762件のデータを分析した。「お金の知識に自信がある」と答えたのに、金利・物価・分散投資の3つの問題の正答が平均より少なかった人を「自信過剰」とした。自信過剰の人は、2020年3月の急落時に株や投資信託を売りやすかった。論文の計算では、一部を売る確率が約1.2ポイント高かった。正答の多さは、売る確率を下げる方向に関係していた。
対象: 日本の個人投資家(18歳以上) / 限界: 2020年の行動を後から思い出して答えた調査で、自信過剰が売った原因とまでは言えない。
Iturbe-Ormaetxe ら(2016)[3]
スペインの大学生96人が、手持ちのお金の一部を当たりはずれのある投資に回す実験をした。結果を毎回知らされる組より、まとめて知らされる組の方が投資額が多く、確率がわかる条件では平均38.9%多かった。損をした直後は、投資額を平均15.4%増やしていた。
対象: 経営学を学ぶ大学生 / 限界: 少額をかけた実験室の結果で、実際の資産運用とは違う。
03 今日からできる小さな一歩自分の投資のくせに、どう気づく?
投資のくせには、取引の記録を開いてから下の8つの質問に答えると気づきやすい。記憶だけで答えると、研究のとおり成績がよい方にずれやすいため、必ず記録と並べて確かめる。
| 番号 | 質問(記録を見ながら「はい」か「いいえ」で答える) | 気づけるくせ |
|---|---|---|
| 1 | 記録を見る前に思い出した成績は、記録より高かった? | 記憶のずれ [1] |
| 2 | 真っ先に思い浮かぶのは、うまくいった取引ばかり? | 負けを忘れやすい [1] |
| 3 | 「市場の平均より上手にやれる」と思っている? | 自信過剰 [1] |
| 4 | 下の3問で、自信のわりに迷う問題があった? | 知識への自信のずれ [2] |
| 5 | 大きく下がったとき、全部売りたくなった(売った)ことがある? | 急落時の売り [2] |
| 6 | 値動きを1日に何度も確かめている? | 結果を見る回数が多い [3] |
| 7 | 損をした直後に、取り返そうと金額を増やしたことがある? | 損の後のかけ増し [3] |
| 8 | ここ1年で、売り買いの回数が増えている? | 記憶のずれと売買回数 [1] |
「はい」が多いほど悪い、という採点表ではありません。研究で決まった基準もありません。「はい」になった番号が、自分のくせが出やすい場面の目印です。
質問4で使う3問は、日本の調査[2]で使われた問題です。答えは「多い」「少ない」「誤り」です。
- 100円を年2%の利息で5年間預けたら、合計は102円より多い?ちょうど?少ない?
- 預金の利息が年1%で物価が年2%上がるなら、1年後に買える量は今より多い?同じ?少ない?
- 「1社の株を買う方が、株の投資信託を買うよりふつうは安全だ」。正しい?誤り?
取引の記録を開く前に、成績を書き出す
「影響の大きかった2つの取引は、何%のもうけか損か」を記憶でメモします。そのあと記録を開いて並べます。
所要 10分
8つの質問に答える
記録を横に置いたまま答え、「はい」の番号だけメモします。
所要 5分
値動きを見た回数を1週間数える
アプリを開くたびに1つ数えます。質問6の答えを、思い込みでなく数字で確かめるためです。
所要 1日数秒
04 続けるためのコツくせに気づいたあとは、どうすればいい?
くせに気づいたら、判断を記憶ではなく記録に頼る形にする。実験では、記録を調べて答えた投資家の方が、自信過剰と売買したい気持ちが低かった。
- 振り返りは記録で行う。半年に1回など日を決めて、記憶ではなく記録で成績を確かめます。記録を調べると自信過剰が下がった研究があります[1]。
- 見る回数を先に決める。「週に1回」のように決めると、質問6のくせに振り回されにくくなります。結果をまとめて知らされた人の方が多く投資した実験もあります[3]。
- 急落したときの行動を、平時に1行で書いておく。「下がったら、まず1日おいてから考える」など。質問5が「はい」だった人向けです。
- 損の直後は大きな判断をしない。損をした直後に投資額を増やす傾向が実験で見られました[3]。
- 不安が強いときは、お金の不安そのものと向き合う。将来のお金の不安が消えない理由は見通しを持つことの研究で読めます。
05よくある質問
投資の自信過剰かどうか、どう確かめる?
記憶で思い出した成績と、実際の取引の記録を並べるのが手軽な方法です。米国の研究では、投資家は成績を実際より高く思い出す傾向があり、そのずれが大きい人ほど自信過剰でした。この記事の8つの質問も、記録を見ながら答えます。
株価や基準価額は、毎日見ない方がいい?
見る回数の正解は研究で決まっていません。ただ、結果を毎回知らされた人は、まとめて知らされた人より投資額を減らしやすいという実験があります。まず1週間、見た回数を数えて、自分で回数を決めるとよいでしょう。
暴落で売ってしまうのは、知識がないから?
知識だけの問題ではありません。日本の19万件超のデータでは、知識の正答が多い人ほど2020年3月の急落時に売りにくかった一方で、知識に自信があると答えたのに正答が平均より少ない人は売りやすい傾向がありました。
この記事は、投資をすすめるもの?
いいえ。特定の商品や売買のタイミングをすすめるものではありません。すでに投資をしている人が、自分の判断のくせに気づくための振り返りです。
出典
- Walters, D. J., & Fernbach, P. M. (2021). Investor memory of past performance is positively biased and predicts overconfidence. Proceedings of the National Academy of Sciences, 118(36), e2026680118. https://doi.org/10.1073/pnas.2026680118
- Bawalle, A. A., Khan, M. S. R., & Kadoya, Y. (2025). Overconfidence, financial literacy, and panic selling: Evidence from Japan. PLOS One, 20(3), e0315622. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0315622
- Iturbe-Ormaetxe, I., Ponti, G., & Tomás, J. (2016). Myopic Loss Aversion under Ambiguity and Gender Effects. PLOS One, 11(12), e0161477. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0161477


