お金の不安

1万円をもらう喜びより、失う痛みの方が大きいのはなぜか。「損失回避」の研究

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Old two pan balance
Photo: Nikodem Nijaki / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(家計・投資の助言ではありません。出典は末尾)。

1万円を拾ったうれしさより、1万円を落としたショックの方がずっと大きい。株やポイントで少し損をすると、なかなか手放せない。そんな経験はないでしょうか。行動経済学では、人は損失を、同じ額の利益より大きく感じる傾向があることが知られています。これは「損失回避」と呼ばれ、お金の判断に大きく影響します。

3行でわかる

  1. 150の論文・607の推定値をまとめた分析では、人は損失を利益の約1.96倍の重さで感じていた。
  2. 19か国・4,098人で、損失回避を含む元の理論の実験を再現した研究では、94%の項目で同じ結果が得られた。
  3. 一方で、「損失が利益より強く感じられるのは一般的な原則とは言えない」とするレビューもあり、状況によって違う可能性も指摘されている。

01「損をしたくない」気持ちは、「得をしたい」気持ちより強い

損失回避とは、同じ金額でも、得をするより損をする方を大きく感じる心の傾向です。「損をしたくない」という気持ちが、お金の判断を慎重にもすれば、判断を誤らせることもあります。

行動経済学者のカーネマンとトベルスキーは、1979年に、人がリスクのある選択をするときの心の動きを説明する理論(プロスペクト理論)を発表しました。損失回避はその中心的な考えの一つです。

損失回避が強く働くと、損をしている株を「元に戻るまで」と売れなかったり、使っていないサブスクを解約できなかったり、少しの損を避けるために大きなチャンスを逃したりします。

一方で、損失回避は、無駄遣いを防いだり、リスクの高い話に飛びつかないようにしたりする面もあります。

02研究でわかっていること

人は損失を利益の約2倍の重さで感じる傾向があり、この理論は多くの国で再現されています。ただし、いつも当てはまるわけではないという反論もあります。

Brownら(2024)[1]

1992〜2017年に報告された150の論文・607の損失回避の推定値をまとめた。人が損失を利益に比べてどれくらい重く感じるかを表す係数は、平均で1.955だった。研究の方法による違いは、あまり大きくなかった。

対象: 150の論文、607の推定値 / 限界: 経済学・心理学・神経科学などさまざまな方法の研究をまとめたもの。

Ruggeriら(2020)[2]

1979年のプロスペクト理論の元の実験を、19か国・13言語・4,098人で、通貨だけを合わせて再現した。94%の項目で元の結果が再現され、13の理論的な比較のうち12が再現された。国によって違いはあったが、理論の基本は確かめられた。

対象: 19か国の4,098人 / 限界: 仮定の選択問題への回答。

Gal & Rucker(2018)[3]

損失回避の証拠を見直したレビュー。今ある証拠を総合すると、損失がいつも利益より強く影響するとは言えないと主張した。状況によって、損失と利益の影響の大きさは変わると考えるべきだとしている。

対象: これまでの研究のレビュー / 限界: 損失回避を支持する研究者との間で議論が続いている。

Arioliら(2026)[4]

損失回避を調べた脳画像研究をまとめた。損失回避の係数の平均は1.71で、損失を利益より重く感じる傾向が確認された。報酬、感情、体の感覚に関わる脳の部分が、一貫して関わっていた。

対象: 脳画像研究のメタ分析 / 限界: 研究の数と方法に限りがある。

03今日からできる小さな一歩

損失回避は、なくすことはできませんが、気づくことはできます。「損をしたくない」気持ちで判断していないか、立ち止まって確かめます。

1

「今ゼロから選ぶならどうするか」と考える

損をしている株や、使っていないサービスをやめられないときは、今ゼロから選ぶとしても同じものを選ぶかを考えます。

所要 1分

2

損と得を同じ物差しで比べる

「損をしないこと」だけでなく、「続けることで失うもの」も書き出して、両方を比べます。

所要 5分

3

「損をしない」をうたう勧誘に注意する

「元本保証」「絶対に損しない」など、損失への不安に訴える勧誘ほど、内容を確認します。

所要 判断するだけ

04続けるためのコツ

損失回避は、お金を守る力にもなります。損を怖がりすぎて動けなくなっていないかを、ときどき見直すことが大切です。

05よくある質問

損失回避について、よく検索される疑問に研究の範囲で答えます。

損失回避とは何ですか?

同じ金額でも、得をするより損をする方を大きく感じる心の傾向です。607の推定値をまとめた分析では、人は損失を利益の約2倍の重さで感じていました。

損失回避は本当にあるの?

多くの研究で確認されています。19か国・4,098人の再現研究では、元の理論の94%の項目が再現されました。ただし、いつも当てはまるわけではないという反論もあります。

損失回避でどんな失敗をしやすいの?

損をしている株を売れない、使っていないサブスクを解約できない、少しの損を避けて大きなチャンスを逃す、などがあります。

損失回避とうまく付き合うには?

「今ゼロから選ぶならどうするか」と考えること、損と得を同じ物差しで比べることが役立ちます。

出典

  1. Brown, A. L., Imai, T., Vieider, F. M., & Camerer, C. F. (2024). Meta-Analysis of Empirical Estimates of Loss Aversion. Journal of Economic Literature.(MetaArXiv版で内容を確認) https://doi.org/10.31222/osf.io/hnefr
  2. Ruggeri, K., et al. (2020). Replicating patterns of prospect theory for decision under risk. Nature Human Behaviour, 4(6), 622-633. https://doi.org/10.1038/s41562-020-0886-x
  3. Gal, D., & Rucker, D. D. (2018). The Loss of Loss Aversion: Will It Loom Larger Than Its Gain? Journal of Consumer Psychology, 28(3), 497-516. https://doi.org/10.1002/jcpy.1047
  4. Arioli, M., Colletti, M. P. M., Cattaneo, Z., & Canessa, N. (2026). Mapping the functional neurocognitive correlates of loss aversion: A coordinate-based meta-analysis. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 191, 106937. https://doi.org/10.1016/j.neubiorev.2026.106937